3つの独自メソッド
一方で浅利さんは、学校における日本語教育についても疑問を感じてきたといいます。
日本の初等教育の現場では、長く「読み書き算盤」が重視されてきました。表示された文字が理解でき、書類や手紙が書け、簡単な計算ができること。それが何より重要だったわけです。
しかし、「読み書き」の後にいきなり「算盤」が来るのではなく、「読み書き話す」でなければならなかったのではないかと考えたのです。
先生の授業をおとなしく聞き、ノートを取ることは上手でも、自分でしゃべることはまったく不得意のまま育ってしまった日本の子どもたち――。
危機感を抱いた浅利さんは、四季が舞台で培ってきた「母音法」という明瞭にセリフを話す技術が、日常生活の中でも役立つのではないかと思い至り、「『美しい日本語の話し方』教室」というプロジェクトを始めました。
これは、四季の俳優3名が1組となって小学校の教室に赴き、寸劇形式で子供たちに直接「母音法」の基礎を教えるというもので、2005年の開始以来、これまでに全国で計24万人もの子供たちが受講、近年では放送局や航空会社などからも声がかかるようになったとか。
この「母音法」に加え、「呼吸法」、「フレージング法」という3つの独自メソッドを公開したのが本書です。
「母音法」では、喉、舌、口などの基本フォームを図解しながら、正しい発声法を説明します。ちなみに、真珠のネックレスのように一音一音を等間隔に発音することが大切だとか。ヒントは、小澤征爾さんから得たそうです。
次の「呼吸法」では、腹筋と背筋の使い方を学びます。お腹前方だけでなく腰の後方の膨らみを意識した腹式呼吸が大切なのです。
第3の「フレージング法」とは、「言葉をどこで切るべきか」を考える方法論です。
スピーチやプレゼンテーションの場で、自分の用意した原稿を読む場合、句読点に従ってフレーズを切る方は多いと思います。
しかし、これらの句読点は、文章を目で読みやすくするために用いられている場合がほとんどです。つまり、ひらがな、または漢字が続いた場合にも打たれていますが、「話す」時には、必ずしも、それに従う必要はありません。
その他、詳しくは、本書に譲りますが、美しい日本語が話せる人は、第一印象もいいし、スピーチやプレゼンテーションでもいい結果を出せることは間違いないところでしょう。
皆さんが社会生活を営む上で、自分の考えを正確に相手に伝えることの一助になれば、と浅利さんは、創立60周年記念公演が続く多忙の中、鋭意ご執筆下さいました。
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