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山は、人の生きる意味と向き合う場所

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「本の話」編集部

『その峰の彼方』 (笹本稜平 著)

出典 : #本の話
ジャンル : #エンタメ・ミステリ

――確かに、捜索隊の一員となって悟を懸命に探す親友の吉沢や、凜として悟の帰還を待つ妻の祥子をはじめ、仲間たちは皆、悟の情熱に打たれて前向きに行動していきます。

笹本 国際謀略モノや警察モノを書くときには、どうしても敵役なり裏切り者を設定することが多いのですが、今回は、悟の考え方や行動原理が「輝ける太陽」となって登場人物たちを照らし、温かく包む構成。その太陽の輝きを際立たせるためにも、余計なものは要らない、と思いました。

私の思考回路を突き抜けた主人公

――その太陽の輝き、温かさの中には、アメリカ・インディアンの「生きる知恵」も反映されていますね。

笹本 マッキンリーを舞台にすると決めたとき、すぐにアラスカに生きる彼らの考えが頭に浮かびました。自然と共生しながら、また何代も先の子孫たちのことを考えながら生きていくことこそ、人間のあるべき姿ではないか、という考えのもと、彼らは生き続けてきた。いろいろ調べていると、たとえば彼らは部族会議の席に、「狼代表」を同席させるんですよ。もちろん人間が、狼の意見を代弁するわけですが(笑)、そうすることで、自然との調和をとっていたようです。そういった彼らのユニークだけれども奥深い考えを取り入れることで、物語が豊かになっていく手応えがありました。

――悟はその類まれなる行動力で、物語を、そして読者を想像を絶するところへと連れていってくれます。これは作者の目論見どおりでしたか?

笹本 いえ、これはもう、悟に任せっきりというか、物語の中で自由に、好き勝手に動いてもらったらこうなった、というのが正直なところです。これは作家にとっての賭けのようなものですが、今回、悟は私の思考回路を突き抜けて、見事にいい方に裏切ってくれました。

『その峰の彼方』
笹本稜平・著

定価:1,900円+税 発売日:2014年01月10日

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