2つ目の質問はマイクアクションが上達する方法を教えてください、という質問。アニメの収録現場では、限られたマイクに対してキャストが交代で声を吹き込まなければならず、マイクの前に飛び込むタイミングが難しいらしい。これにはお2人とも「今でも難しい!」と声をそろえた。しかし、現在レギュラーで出演している作品でもぶつかりまくっているとは言いつつも、明坂さんは「台本の3つ前のセリフに印をつけて飛び出すタイミングにする。」と具体的な解決方法を示した。一方のKENNさんは新人時代の裏話を披露。「最初の現場は役どころ的に、1度喋ったら喋りっぱなしの状況が多かったんです。だから、あまりマイクを移動する事がなかったけれど、いざマイクアクションを覚えなきゃならなくなったときはすごく緊張しました。」とのこと。そのまま話題は収録時のよくあるNGポイントに流れ、「間違えたときのすみません、は芝居が止まるのでNG」「ウインドブレーカーはカサカサ音がするから着てこない」「ピンヒールは声を出すときに力が入らない」等々……、これぞ裏話という興味深い話が次々と出てきた。
最後の質問は、演技プランはどうやって練っていますか、という質問。明坂さんは「周りの人から吸収する」とアドバイス。実際、現在演じているキャラクターは友人を参考にしているとのこと。これを受けたKENNさんは、「それは分かる!」と同意しつつ、なぜか話は自動車教習所の教官は個性的な人が多いという話題に。明坂さんがぶっきらぼうな教官を演じると、KENNさんはさりげなく華麗なハンドリングを披露する教官を演じ、その真に迫った(!?)演技に会場は大きな笑いに包まれた。冗談を飛ばしつつ、最後はKENNさんが「テンプレじゃないところにチャレンジしたい」と演技に対する哲学を語った。「たとえ王道をいく演技であっても、そこに至るまでに自分なりにあがいて到達したい。」確かに、『声のお仕事』の作中にも演技のコピーという問題が描かれている。多くの声優志望者がいる中でトップであるためには、他人の演技のコピーではない、「その人だけのもの」が必要なのだろう。
最後のコーナーでは『声のお仕事』のある場面をKENNさんと明坂さんが朗読。一瞬で会場の雰囲気が変わったのは照明が絞られたせいではないだろう。きっと川端さんが『銀河へキックオフ!!』の現場で目撃された瞬間が、すべてではないにしろそこに現れていたのだ。KENNさんの、演技になれていない新人声優の演技、明坂さんの、少年を演じる女性声優の演技、複雑な演技に会場は圧倒されていた。実はお2人とも読み合わせをしたのは本番直前のリハーサル1回のみ。それでも一瞬で空気を換えてしまう演技をしてしまうのだからプロの声優というのはやはり凄いのだ。
朗読の興奮冷めやらぬままトークは終了の流れへ。それぞれイベントの感想を述べて終わり……かと思いきや、客席から『銀河へキックオフ!!』の監督を務めた宇田鋼之介さんが登場。思わぬサプライズにさらに盛り上がりをみせたところでトークは終了。声優業界のディープな部分に触れることが出来た内容だった。
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