息子もまだ子供だったので、そんなに高度なテクニックが必要なほどではない。
もっぱら私は、彼が中心地点でコントローラーを持って立っているまわりを、飛行機の胴体を持って走りまわり、彼の飛行機を、見事に飛行させる役をやって居た。
それも、私の父親との交流の中から自然に身についたやり方だったのだと思って居りました。
息子との付き合い方には色々と気を使っていたつもりですが、あとで聴いて見ると、やっぱり彼のオモチャを勝手に取り上げて、自分だけ夢中になっていたものがあると云われ愕然としたことがあります。
何とそれは、田宮さんの所のミニ四駆だとのこと、私にはまるで記憶にはないのでありますが、ある日彼が夢中になっていたミニ四駆を私が取り上げて、勝手に夢中になっていた、とうらめしそうに私に云ったのであります。
その時私はあらためて血は争えないなあと思ったのであります。
それから又何年かたちました。
その当時私は、新宿のセンチュリーハイアットと云うホテルに、番組や雑誌の打ち合せ等で、何度か行く事があったのですが、その時ふと窓から外を見ますと、たしかあれはハイアットホテルの東南に位置していたと思うのですが、消防署が訓練に使っていた広い空地があった筈でした。
何でその空地に興味があったのかと申しますと、その空地こそが、私が息子の飛行機の胴体を捧げ持って、息子のまわりを走り回っていた空地であったのです。
その空地こそ、今の都庁ビルがそびえ建っている土地でありました。
当時私は、中野のブロードウェイコーポの十階に住んで居りましたので、遠隔の地ではありましたが、あそこに今建設中の都庁ビルには、やがて私が東京都知事として乗り込むことになると密かに望んでいたのです。
人間永く生きていれば、いろいろな事になるもんでありますなあ……。
いろいろな夢を見、様々な方々の協力を得、自らも営々と苦労を積み重ねて今の大田宮株式会社を立ちあげてこられた田宮俊作氏の永年の御苦労と努力をたたえると共に、人生の不思議に思いを致して居ります。
勝手に私の思い出ばかり書いてしまいましたが、この本は誰でもが知っている田宮模型の歩みを面白く綴ったもので、模型に興味のある方にも、ない方にも心からおすすめする一冊です。ぜひ御一読を!
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『赤毛のアン論』松本侑子・著
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