知っているようで知らない書店のことについて、全国各地の書店員さんが顔出しで回答する「10人の書店員に聞く<書店の謎>」。今回は、書店員の役得(?)についてお答えいただきました。
暇なときは読み放題?
書店員さんといえば本の山に囲まれた日々ですから、こんな質問をしたくなる気持ちも分ります。
書店員さんは、暇な時間やお店番のとき、好きな本をどれでも読み放題ですか? (神奈川県 40代 女性)
内田剛(三省堂書店神田神保町本店)
店頭に並んでいる本や雑誌はお客様のための大切な商品ですので、廻し読みすることはありません。一般の方と同じように、読みたい本は購入して読みますので読み放題ではないですね。いち早く新しい本や雑誌の情報を得られることが最大の利点です。
栗原浩一(あゆみBOOKS仙台青葉通り店)
レジでお客さんが来ない時は本や雑誌を読めるというイメージですが実際にはお客さんがいない時でもしなければいけない仕事はたくさんあります。カバーを折ったり雑誌の付録つけやコミックの袋かけ、売れたスリップをジャンルごとに仕分けしたり客注をパソコンで発注。手があいたら店内の整理整頓など、レジで接客する以外にもやることはけっこうあるのです。
本は自分で買っている? 割引はある?
書店員さんは書籍は自分でお買いになるのでしょうか、それとも業務上必要ということで無料で読んだ後また店頭に並べられるのでしょうか? よくおすすめのコメントなどが置かれたりしていますので、前から気になっていました。(京都府 60代 男)
内田剛(三省堂書店神田神保町本店)
誰か買ってくださるとよいのですが、そういう方もいらっしゃらないので、自分で購入しています。店頭商品は汚してはいけませんので、拝借することはありません。文芸書の場合ですが最近は、刊行前のゲラの段階で読ませていただき部数決定や、販促方法の作戦を練ったりすることも増えてきました。
高橋佐和子(山下書店南行徳店)
自分で購入しています。お店によって方針が違うと思いますが、当店は「店員の立ち読み」は基本的に認められていません。関連性を持たせるため、棚に陳列する前に「もくじ」をパラパラ見ることはあります。フェアに適しているかどうかやPOPを作るために内容を確認したいと思う場合は、購入しています。
例外もあり、出版社の熱心な営業の方が文芸書やビジネス書で「ぜひ読んで感想を聞かせて欲しい」と本になる前の本をプレゼントしてくださる場合があります。お客様への届け方を早くから考えることが出来るので、とても有難いです(新刊が読めるという面でも嬉しいものです)。それから、図書館にも行っています。新刊の棚に時折、当店でも展開したい本があったりするので、見つけると借りるようにしています。
戸木田直美(代官山蔦屋書店)
おそらくどの書店でもそうだと思いますが、店頭に並んでいる書籍は、すべて自分で購入しています。ただ、出版社の方にお願いして、事前に本になる前の状態で、原稿を読ませていただくこともよくあります。このときは印刷したページがまだばらばらの紙の状態だったり、ほんの一部だけだったり、仮で本になっていたり、とさまざまです。発売と同時にフェア展開を開始する場合など、どうしても必要になりますので。
そうやって取り上げた本は、たとえ一度内容を目にしていても、新刊で入ってきたら購入してしまうことが多いです。
富田結衣子(文教堂書店代々木上原駅店)
版元さんからゲラや献本という形で頂くこともありますが、基本的には自分で購入して読みます。できるだけ、自分がその価格で買って読んでみて「面白い!」と思った商品を売り場でオススメしたいと考えているからです。
当店は広いお店ではないので、できるだけお客様の目線に立って読むことで、少しでも売り場のオススメ商品に説得力がでるように、購入していただいたお客様との距離が近くなるようにという気持ちもあります。なかなか手が出しづらいシリーズものに関しては同僚と貸し借りをしたり、お互いに最近のオススメを貸し合ったりすることで独りよがりな棚にならないように気を付けてはいますが、時々常連さんに「ほんと、こういうの好きだよねー」と言われることも……。
山本善之(くまざわ書店大手町店)
自分で買います。店頭の本は商品ですので読んで戻すことはありません。また、商品が値段通りの価値があるかどうかは身銭を切らねば計れません。
例外。私は書き下ろし新刊が既に「書店員絶賛!」となっていることに謎を感じていました。最近書店員が無料で本を読む方法に少し近づいたのでお教えします。
(1)ゲラ読みに応募する。
書店員の感想を使用した宣伝等を目的とする出版社の募集に応募します。製品のモニターになるので感想の提出などが必須です。
(2)キーパーソンになる。
商品が効率的に広まるため必要な人になれば、無料サンプルを貰える機会が増えます。内容の魅力を広める力に長けたり、POP作りの達人になったり。販売を統括できる立場まで偉くなってもよいです。個人的に著者・出版社など制作の方々と仲良くなり、信頼感を得ることもオススメです。
……結論として(2)になれるのは一握りですので、私のような一般書店員は自費で書籍を購入しています。
働いてる方は特別に本が安く買えたりしますか? (千葉県 20代 女性)
内田剛(三省堂書店神田神保町本店)
多少の従業員割引はありますが、物価の高騰と低賃金を補うほどではありません。
-
『赤毛のアン論』松本侑子・著
ただいまこちらの本をプレゼントしております。奮ってご応募ください。
応募期間 2024/11/20~2024/11/28 賞品 『赤毛のアン論』松本侑子・著 5名様 ※プレゼントの応募には、本の話メールマガジンの登録が必要です。