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編集者出身の喜劇王 古川緑波

編集者出身の喜劇王 古川緑波

文・写真:「文藝春秋」写真資料部

 昭和を代表する喜劇俳優・古川緑波には、文藝春秋の社員であった時期がある。

 本名は古川郁郎。明治三十六年(一九〇三年)華族の家に生まれた、生粋のインテリ。「緑波」は小学校時代に自らつけた筆名だ。映画雑誌への投稿で文才を発揮、早大在学中に菊池寛に招かれ、雑誌「映画時代」の編集者として入社した。

 やがて「映画時代」を独立させ、自ら経営に乗り出すが、失敗。「声帯模写」で開花するのはその後である。徳川夢声らと「笑いの王国」を結成、モダンな芸風で大人気となった。

 写真は、戦後間もない昭和二十四年(一九四九年)五月、東京劇場での観劇風景で、左端が緑波。(緑波の右から)横山隆一、中山義秀、佐々木茂索(社長)、今日出海といった、文藝春秋で活躍する面々と共に、笑顔を見せている。この月、有楽座で「古川緑波一座」の公演をおこなっているが、さしもの人気にも陰りが見えていた。緑波の日記には、共演者、興行主、観客への不満、愚痴が多くみられる。案の定、緑波の一座はこの公演を最後に解散する。憂鬱な時期、昔からの仲間との束の間の心休まるひとときだったのだろうか。

 この後も喜劇界の重鎮として活躍し、昭和三十六年、五十七歳で没する。

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