- 2014.04.01
- 書評
税理士には絶対書けない本を書いた理由
文:山田 順 (ジャーナリスト)
『税務署が隠したい増税の正体』 (山田順 著)
出典 : #文春新書
ジャンル :
#政治・経済・ビジネス
話は昨年9月にさかのぼる。
当時、安倍首相は大きな決断を迫られていた。それは消費税を8%に上げるという、私たちの暮らしに直結する大問題だった。いくらアベノミクスで円安になり株価が上がったとはいえ、景気回復の実感は乏しい。普通なら、この状態での増税はありえない。
しかし、メディアの報道は増税容認が大勢だった。また、2020年の東京五輪も決まって、日本中が祝賀ムードに包まれていた。その結果、安倍首相は10月1日、消費税の増税を発表した。
この経過を見て私は、この先、日本は大変なことになると思った。なぜなら、増税は消費税ばかりではなく所得税や相続税などにも及んでいるからだ。
じつは私は、経済やビジネスに関しての本を書きながら、その一方で出版プロデュースも手がけている。そこで、税の専門家は増税をどう見ているのか――なにより、私たちの暮らしはどうなるのか――を、徹底して追求した本を企画すべきと考えた。そうして、何人か著者になりそうな税理士や弁護士などに当たったが、返事はすべてノーだった。すでに世の中には、増税を見越した対策本が出始めており、雑誌でも「税特集」が組まれることが多くなっていた。ただそれらは、いずれも節税ハウツーが中心。しかし、私が望んだのは節税ハウツーではなかったので、みなさん尻込みしたのである。
「山田さんが言うことは、ひと言で言うと“反税思想”だ。それに基づいて本など書いたら、国に睨まれるし、なにより自分の職業が成り立たなくなる」と、ある税理士は言った。国際税務に詳しい弁護士も、「いやあ、そこまでは踏み込めない」と言うのだった。
じつは、この世の中に自分だけトクできる節税法などない。もちろん脱税は論外だ。だから出回っているハウツー本は、税務署も先刻承知している事柄の羅列にすぎない。
そこで困った私が頼んだのが、友人の税理士N氏。彼は、税務法人を長年経営してきた豊富なキャリアの持ち主で、考え方も私に近かった。
-
『赤毛のアン論』松本侑子・著
ただいまこちらの本をプレゼントしております。奮ってご応募ください。
応募期間 2024/11/20~2024/11/28 賞品 『赤毛のアン論』松本侑子・著 5名様 ※プレゼントの応募には、本の話メールマガジンの登録が必要です。