インタビューほか

「米国型能力主義」か、「日本型年功序列」か

山田 昌弘

『いつでもクビ切り社会』 (森戸英幸 著)

山田昌弘(中央大学教授)

山田  アメリカの女性弁護士を描いたドラマ『アリー my Love』でも、「年齢を理由に降板させるのはけしからん」といって、ニュースキャスターが賠償金をせしめる訴訟の話が出てきますね。

森戸  アメリカでは、何歳かわからなくてもとりあえず雇うし、「年齢」を理由に解雇もできませんが、しかし「年齢」にかかわりなく、「仕事ができないから」という理由であればクビにできるんです。

  一方、日本は採用時に「年齢」でもなんでも、ネチネチと聞いてもいいけれど、雇った以上は簡単にクビにできません。

  つまり、「エイジフリー」というバラ色の社会の裏には、「いつでもクビ切り社会」というトゲがある。それを見ないで、「日本はアメリカより遅れている」と言うのは、安易すぎます。

  こうしたアメリカのあり方を「能力主義」と持てはやす向きもあるでしょうが、「A君は九十点で、B君は八十五点だから、A君を昇進させる」のように、社員の能力を客観的に評価するなんて、簡単ではありません。アメリカ人だって上司に気に入られる方が得だし、実際、上に気に入られようとしてペコペコしていますよ。

山田  アメリカでは上司とソリが合わなくて低く評価されていると思ったら、すぐ転職するわけですね。『アリー my Love』でも、弁護士が事務所をしょっちゅう変わる(笑)。

森戸  アメリカ人は、四十歳ぐらいまでは懸命に転職活動をしますね。

山田  でも、それはキャリア組ですよね。日本は逆に、管理職はまったく動かないで、若者たちがクビを切られてしまうか、参入さえさせてもらえない。そういった日本で「エイジフリー」を導入すると、上の方が「定年制廃止」の恩恵を受けるだけになるかもしれません。

『いつでもクビ切り社会』には、「エイジフリー」を導入するということは、単なる一つの制度だけ変えればいいという問題ではなく、他の制度や、あるいは日本文化そのものにも波及していくということが随所に書かれています。

いつでもクビ切り社会
森戸 英幸・著

定価:788円(税込)

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