インタビューほか

「米国型能力主義」か、「日本型年功序列」か

山田 昌弘

『いつでもクビ切り社会』 (森戸英幸 著)

  実は、「能力主義」と「年齢」がうまくマッチしているシステムが「宝塚歌劇団」ではないでしょうか。宝塚は「何期」「何年卒」といった入団年によって、支度部屋の大きさをはじめ序列が全部決まっています。一方、トップスターになれるかは、入団年に関係なく、まったくの実力で決まります。日常は年齢で序列が決まっていながらも、舞台に立てば、若い主役の周りで年配の人が脇役をする。

『宝塚おとめ』といったデータブックを見ても、「トップ」以下主要三役であっても、それほど歳がいかない人は、序列の中では写真が小さく出ます。

  この宝塚システムを日本の会社に当てはめるのはどうでしょうか。社内は年功序列で机の大きさなどが決まるけれども、ビジネスの舞台では、序列の中ぐらいの人が部長になって、ヒラの先輩をこき使うこともある。

森戸  先輩を立てることに、宝塚は厳しいそうです。

山田  逆に、いくら年功があっても人気のない人が主役をやったら、お客さんは入りません。舞台は市場主義、能力主義で決め、舞台を離れたところでは年功序列です。

  おもしろいことに、宝塚ではスターよりも脇役ほど残るのです。スターは五年も十年も主役を張っていられないので、いつかは降りなければなりません。女優になったり、結婚して退団する。一方、脇役で残りたい人はいくらでも残れて、組長になったりします。若いころは注目を浴びなくても、年齢を重ねることで、名脇役として存在感を発揮する人もいます。

森戸  能力がほどほどの人の生きる道も残されているんですね。

山田  だから、日本の会社の社長もあまり長いこと主役を張らないで、辞めていただく。一方、収入は低くてもヒラでこつこつ長くいたければいられるという、「宝塚的人事制度の勧め」こそ、日本人の知恵ではないでしょうか(笑)。

森戸  さすが、社会学者の方は、陽気な経済学者と意地悪な法学者の間にいい落としどころを考えつくものですね(笑)。

山田  それは、『いつでもクビ切り社会』に触発されたまでのことです。特にデメリットを説くところなどは、法学者がこんなに意地悪だとは思いませんでした(笑)。おおいに笑って、タメになりました。

いつでもクビ切り社会
森戸 英幸・著

定価:788円(税込)

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