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解説――血をまき散らせ!

解説――血をまき散らせ!

文:馳 星周 (作家)

『ホワイト・ジャズ』 (ジェイムズ・エルロイ 著/佐々田雅子 訳)


ジャンル : #小説 ,#エンタメ・ミステリ

 情念と暴力の作家。エルロイのことをそう呼ぶと、一部から批判の声があがる。

 エルロイはそれだけの作家ではない。あの綿密に組み立てられた精緻なプロットこそが、エルロイをしてアメリカを代表する作家たらしめているのだ、と。

 くそくらえだ。

 確かに、出世作の『ブラック・ダリア』以降、エルロイの作品は変わった。精緻なプロットの導入で、それまでは一部の人間から愛されるだけだったエルロイの作品は、全米でベストセラーとなるようになった。だが、それは小説を書く技術が向上したというにすぎない。異論がでそうだが、いいきる。小説は技術で書くものではない。したがって、エルロイ作品の魅力はその精緻なプロットにあるのだとするものは、エルロイの読者たる権利を自ら放棄している。

 なぜ、ある種の人間がエルロイの作品に取り憑かれてしまうのか。明確な答えはエルロイの内面にこそある。エルロイはとち狂っているのだ。なかでも、『ホワイト・ジャズ』はとち狂っている。『ブラック・ダリア』からはじまる〈暗黒のLA四部作〉――実際のところ、『ブラック・ダリア』と他の三作にはそれほどの接点はないが――はどれもとち狂っている。しかし、『ホワイト・ジャズ』のとち狂い方は、四部作を締めくくるに相応しい。

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ホワイト・ジャズ
ジェイムズ・エルロイ・著 佐々田雅子・訳

定価:1,170円+税 発売日:2014年06月10日

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