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河盛好蔵は「フランス文学の町医者」

河盛好蔵は「フランス文学の町医者」

文・写真:「文藝春秋」写真資料部

 フランス文学者、評論家の河盛好蔵は明治三十五年(一九〇二年)、大阪府堺市生まれ。旧制府立堺中学を経て、第三高等学校に入学。京都帝国大学仏文科を卒業後、関西大学に赴任する。昭和三年(一九二八年)、理事同士の確執に嫌気がさして関西大学を辞職、フランスに渡る。昭和五年、帰国。「ファーブル昆虫記」を三好達治らと共訳する。

 戦後、東京教育大学、共立女子大学教授となる。モラリスト文学を研究し、「フランス文壇史」で読売文学賞(研究・翻訳)を受賞する。「パリの憂愁」で大佛次郎賞を受賞。昭和六十三年には、文化勲章を受章した。

〈私はフランス文学研究の町医者をもって自ら任じ、その代り、患者に親しまれ、頼りにされる医者になることを多年心がけてきた〉(「外国語五十年」より)

 写真はこのときに神田神保町の古書店にて撮影。

 当時すでに八十代半ばだった。

〈雑誌「新潮」に『藤村のパリ』を連載するなど、執筆意欲はなおも旺盛だが、「一日の三分の二は寝てますよ」と苦笑する。
「調べるのは楽しみだが、書くのはどうも面倒くさい。小林秀雄さんが晩年に、一日のうちで頭がハッキリしてるのは二時間だけ、と言ってたが、わかるような気がするな」〉(「文藝春秋」昭和六十四年一月号「日本の顔」より)

 老体ながらも執筆に励んでいたが、平成元年(一九八九年)に、八十七歳で脳梗塞に見舞われ倒れてしまう。しかし、その後も筆を置くことなく精力的に執筆活動を続け、「藤村のパリ」で、二度目の読売文学賞(随筆・紀行)を受賞。また、新潮社から「私の随想選」全七巻を刊行する。さらに、平成九年、九十五歳にして、京都大学から博士号(文学)を授与された。平成十二年没。

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