- 2013.11.19
- 書評
『ちゃうんちゃうか精神』で読んでみる
文:仲野 徹 (大阪大学大学院教授)
『その科学があなたを変える』 (リチャード・ワイズマン 著 木村博江訳)
ジャンル :
#ノンフィクション
好むと好まざるとにかかわらず、職業はその人の考え方に大きな影響をおよぼすものだ。私が生業とする科学者とて例外ではない。
まず、科学者は考え方が厳密である。悪いことではないが、一般の人から見ると、融通が利かない感があるに違いない。しかし、この厳密性のイメージがあるからこそ『科学』という名がタイトルにつけば、その本に正しそうな雰囲気をもたらしてくれる。
もうひとつの特徴として、よくいえば批判的、わるくいえば疑い深い、ということがある。他人の言うことを素直にハイハイと聞いているばかりでは、オリジナルな研究などできはしない。常に、『ちゃうんちゃうか(=ちがうのとちがいますか)精神』で臨まなければならないのである。
というような、いささかいやらしい科学者気質で、『その科学があなたを変える』を読んでみた。結論としては◎。よろしい。『科学』と名乗ることを許してあげましょう。って、お前にそんな権利があるのかと言われると困ってしまうのではあるが……。
19世紀の後半、ウィリアム・ジェームズという心理学者がいた。この人の考え方をひとことでいうと「幸せになるには、幸せであるかのように行動すればいい」ということである。この本、幸せだけではなくて、いろいろなことについて、「○○になるには、○○であるかのように行動すればいい」という『アズイフ as if』の法則がいかに多くのことに当てはまるか、いかに正しいか、を説いていく。