- 2013.11.19
- 書評
『ちゃうんちゃうか精神』で読んでみる
文:仲野 徹 (大阪大学大学院教授)
『その科学があなたを変える』 (リチャード・ワイズマン 著 木村博江訳)
ジャンル :
#ノンフィクション
変わりたい姿を演じる
「自分は強いと思えば苦痛や不安が遠ざかる」「やる気があるかのように行動して、本当にやる気になる」「自分の性格までもアズイフの法則で変えられる」など、ちょいとあやしげな文章が目次に並んでいる。疑い深き科学者として、まずは読む前に、そんな逆向きの因果関係はおかしいやろっ、と、つっこんでしまっていたことを正直に告白しておく。
しかし、読み進めるうち、徐々に説得されていった。第1の理由は、その実証性である。当然のことながら、科学というのはエビデンスに支えられてこそのものだ。この本、巻末に膨大な原著論文リストがつけられている。それらの良質な学術論文をわかりやすく解説しながら、圧倒的な説得力を持って、これでもかこれでもかとぐいぐい迫ってくる。
それだけではない。いきなり、ページを破りなさい、とか、本に書き込みをしなさい、とか、いろいろなことを注文してくる。そして、それらの行為について解説しながら、どや、いかにアズイフの法則が正しいかがわかってきたやろっ、と、強烈に主張してくるのである。
悲しいかな、やってみないとわからんやろう精神、というのも科学者の性のひとつである。うさんくさいなぁ、と思いながらも、読み進め、指示に従っていった。そうするうちに、猜疑心はうすれ、だんだんと納得させられていってしまった。
ある方向に変わりたいと念じたところで、簡単に変われたりはしない。しかし、アズイフの法則が教えるのは、まるでそう変わったかのようにふるまっているだけで、その方向へ変わっていける、ということなのだ。じつにたやすいことではないか。
ここまで言っても、そんな法則なんかおかしいと思われる方も多いだろう。しかし、少しでも自分を変えたい気持ちがあるならば、この本を読んでみることをお勧めする。アズイフの法則をあてはめると、たとえ信じていなくても、信じているかのように行動する、そう、この本を買って読み始める、それだけで、この法則を活用できるようになっていくはずだから。
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