インタビューほか

[選者対談]
小池真理子・川上弘美
作家の全随筆を読んで見えてくるもの

「本の話」編集部

先人のエッセイに浸る至福の日々『精選女性随筆集』(小池真理子・川上弘美 選)

『精選女性随筆集』。偶数月2冊同時刊行。全12巻。幸田文、森茉莉、吉屋信子など18人の作家の作品を収録する。第2回配本4月刊は『第3巻 倉橋由美子』『第4巻 有吉佐和子 岡本かの子』。

川上 小池さんは収録作品を決めるにあたって、この分野とこの分野、という風に公平に選ぼうとなさってますか。

小池真理子
1952年、東京都生まれ。
成蹊大学文学部卒業。1996年、『恋』で第114回直木賞を受賞。本年、『無花果の森』で芸術選奨を受賞。

小池 基本的にはそうしようと思っていますが、今後どうなっていくかは分からないですね。

川上 私は、作品数の多い人ほどバランスよく選べないような気がして、あえて自分の趣味に走りました。例えば幸田文ならば、着物関係はやめちゃったんです。

小池 いいんじゃないかな。『精選女性随筆集』を買ってくれる読者は川上弘美と小池真理子の趣味の世界を覗くことになるわけですもんね。私だって色々なジャンルから選ぶとはいえ「男と女」など好きなテーマを最優先してますし。あと、その作家の「知られざる一面」があらわれているものは外さないようにしています。

川上 特に「知人のことを書いたもの」に書き手の思わぬ一面があらわれていることが多い気がする。

小池 吉屋信子は岡本かの子や林芙美子など、交流のあった文学者の短い評伝を沢山のこしていて、すごく面白い。

川上 知人のことをわりと遠慮会釈なく書く、というのがある時代までの特徴かなと思いました。今の作家は人のことを書かないな、と逆に気づいたりして。

小池 そうですね。何か自己規制しているというか、怖がっているというか。宇野千代なんか、吉屋信子から海外で手に入れた「金色のベッド」をもらって、それが部屋の雰囲気に合わずに困った、とか平気で書いている。

川上 今より村っぽい付き合いだったのかな。女流文学者会の座談会なんか読むと面白いですもんね。

小池 だれかの家に集まって、お互いの着ているものを褒め合ったり、病気の話をしたり。井戸端会議ですよね。
 今だって、男性作家達は銀座や六本木で飲んで騒いでいるけれども、互いがどこまで近しい話をしているかは疑問だし。むしろいちいち書いて公表はしないけれど女の作家同士のほうが親しくし合っているんじゃないかな。いつの世も女性作家のほうが、人間的な、なまの部分を持ちながらものを書いてきていると思います。

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