- 2012.04.18
- インタビュー・対談
[選者対談]
小池真理子・川上弘美
作家の全随筆を読んで見えてくるもの
「本の話」編集部
先人のエッセイに浸る至福の日々『精選女性随筆集』(小池真理子・川上弘美 選)
ジャンル :
#随筆・エッセイ
川上 まだ前半の巻のぶんの作家までしか読んでいないけれど、エッセイに、こんなに色々なものがあって驚いています。全員が全然違う。いま、エッセイというと、雑誌に載っているようなものって、名前を隠すと誰の文章か分からないかも、というくらい雰囲気の似たものが多い気もする。
小池 今回の方々は、ものすごく濃いですよ。力のある文章家が随筆を書いているという、全員にそれは言えますね。
川上 第三巻の倉橋由美子さんは特に異色ですよね。
小池 身近雑記を書くことを嫌った人で、とにかく思想的なことしか語っていない。「私はエッセイを書くのは大嫌いだ」というエッセイを書いている。
川上 エッセイを書かないといえば、有吉佐和子にも1冊しかエッセイ集がない。創作に集中するため、30歳くらいから書かなくなった。それなので第4巻では主にルポルタージュを入れました。同じ巻の岡本かの子は、息子・太郎への手紙にいいものが沢山あるので書簡で1章つくりました。
小池 倉橋さんも、いいお母さんで、主婦としてもちゃんとしていて、という人だったから、自分が若い頃に作り上げた観念と現実との葛藤に苦しんだのではないか、ということが、まとめて読むと見えてきたり。
川上 やっぱり全部読むというのは、その人を本当にじっと見るということで。書いたほうはそんなに自分の書いたものは読み返さずに書き続けると思うので、もしかすると書き手よりも読み手のほうが書き手のことを知っているかもしれないと、今回思いました。幸田文のことは、今この瞬間、私が一番わかっている、という気分だった。
小池 うん。その通りですね。森茉莉だったら森茉莉を読んでいる間は、彼女と同化しているという感じになる。書くものも影響を受けて、連載中の小説に森茉莉風のシーンが出てきたりしました。
――叢書の人選にもお2人の意向が強く反映されています。
小池 大庭みな子さんは前から好きで、絶対やりたかったんです。詩人でもある方で、女性ならではの理知も持っていて。今回読んで、こういう作家になりたいな、と改めて思いました。私が直木賞を受賞した時に芥川賞の選考委員をされていて、会場では黄色のロングドレスを着ていらして、かわいらしい方だった。ご挨拶しそびれてしまいましたが。
川上 私は、食べ物関係のことを書いている作家が好きなんだというのがつくづく分かりました。
小池 さっきから好きなことばかり話してますね、我々。
川上 うん、好きなことは、ほんとうに楽しい。あたりまえなんだけど、あたりまえのことって、けっこう難しいから。
(軽井沢 ホテルブレストンコートにて)
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