インタビューほか

[選者対談]
小池真理子・川上弘美
作家の全随筆を読んで見えてくるもの

「本の話」編集部

先人のエッセイに浸る至福の日々『精選女性随筆集』(小池真理子・川上弘美 選)

[選者対談]<br />小池真理子・川上弘美<br />作家の全随筆を読んで見えてくるもの<br />

『精選女性随筆集』。偶数月2冊同時刊行。全12巻。幸田文、森茉莉、吉屋信子など18人の作家の作品を収録する。第2回配本4月刊は『第3巻 倉橋由美子』『第4巻 有吉佐和子 岡本かの子』。

――女性作家の随筆アンソロジーの選者になってほしい、という依頼を受けた時はどう思われましたか。

小池 正直に言って初めは戸惑いました。叢書の選者って、リタイアした大学の先生が専門分野の文芸作品を昔の記憶で適当に選んで、あとは編集者が仕上げるだけのもの、みたいな先入観を持っていたもので。ただ、川上さんとご一緒にというので心動かされたんです。

川上 私はもともと自分の好きな本を人に紹介したりするのは大好きなんです。書評も結構やっていて、ただ絶対に本当に面白いと思った本しかやらない「わがまま書評」を看板にしておりまして。でも今回は編集者側が粗よりしたものから選ぶことになるのかな、量も多いからしかたないかな、くらいの気持ちもあったんです。そうしたら最初の顔合わせの時の雰囲気がよくて、つい「全部読みたい」と言っちゃった。

小池 私もあの時、これは大変だけれども面白いかもしれない、と思いましたね。名前を貸すだけなら我々でなくてもいいじゃないですか。その席で全12巻のラインナップとどちらがどの作家を担当するか、すぐに決まりましたよね。この作家なら川上さんのほうがイメージに合っている、この人は私向き、という感じで。実際に1人の作家の随筆をすべて読んでいくと、目から鱗のことばかりです。

川上 たとえば幸田文って、着物への造詣が深くて家事にも一家言ある自分とは別世界の人、というイメージがあったのですが全部読むと違うんです。森茉莉も吉屋信子もそうだと思うのですが、その人を象徴するような有名な文章、作品しか皆知らない。それが全部読むと、朝から晩まで寝るまでその人と一緒に行動したような気になる。よそ行きの顔だけじゃない、ドキッとするような面を見られます。森茉莉が鴎外のことを書いた「恋愛」、すごいですよね。お父さんへの愛は知っていたけれどこんなに濃密なんだ、と。

小池 森茉莉に関しては、私も最初は、ある意味常識はずれの、お友達になれないようなタイプの変わった人で、でも三島由紀夫には書いたものを絶賛されている作家、くらいの知識しかなかったんですが、読み始めたら夢中になってしまって、今はもう、森茉莉ラブですね。言葉が綺麗で、改行がほとんどないのですが、どんどん読めるんです。嗜好品のこと、社会風潮のこと、室生犀星や川端康成など人のこと、何を読んでも面白い。

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