インタビューほか

[選者対談]
小池真理子・川上弘美
作家の全随筆を読んで見えてくるもの

「本の話」編集部

先人のエッセイに浸る至福の日々『精選女性随筆集』(小池真理子・川上弘美 選)

『精選女性随筆集』。偶数月2冊同時刊行。全12巻。幸田文、森茉莉、吉屋信子など18人の作家の作品を収録する。第2回配本4月刊は『第3巻 倉橋由美子』『第4巻 有吉佐和子 岡本かの子』。

川上弘美
1958年、東京都生まれ。お茶の水女子大学理学部卒業。1996年、「蛇を踏む」で第115回芥川賞を受賞。
近著は『神様2011』など。

川上 武田百合子さんは富士山荘の日記で、近所に大岡昇平さんの山荘があって家族間の行き来がある様子を書いていますが、ああいう交流も男の作家の文章にはたぶん出てこないですね。大岡昇平はフォーリーブスが好きだったんですって。その中でも特に好きな男の子がいるんだけど、最近は薹が立ってきたから違う子に乗り換えるとか(笑)。

小池 少年愛だったの(笑)? 違いますよねえ。

川上 きれいな子が好きだったんだなあ。そんなことも、女の人じゃないと記録しない。

小池 女の人が記録に残すものと男の人が残すものと、全然違うのね。宇野千代っておかしいんですよ。戦禍を経ているし、その後自分の会社「スタイル」が潰れて莫大な負債を抱えたりしているのに、そういう社会的事象や個人的苦労についてはほとんど書いていない。書いているのは、自分が関わった男たちのことばかりなんです。天真爛漫な男好きというのか、面白かったですね。ところで川上さんは、この選集のための読書の時間はどのように確保していますか。

川上 この仕事の前から、1日のうちの時間配分でいうと、読む時間のほうが書く時間の2倍あったので、今は3倍くらい(笑)。朝起きると、本とか新聞とか2時間くらい寝床の中でずっと読んで、起き出して家事をして、午前中ちょっと書く仕事をして、お昼を食べると疲れるのでまた読んで、しばらくして少し書く。夜はもうずっと読んでいます。

小池 それは、基本的に毎日?

川上 はい。生活の基本に「読む」があるので、その「読む」の時間にこれをずっと読んでいました。小池さんは?

小池 私の書くジャンルの仕事って、とにかく沢山書いてなんぼの世界。いつも時間がない。今、連載が2本あるんですが、それを執筆している間はのめり込めなくなるから読めないんですよ。だから、毎月まとめて読むための時間をとっています。

川上 実は私、震災のあと、ずっと新聞小説を単行本用に直していて、その仕事とこの選集で仕事をしている気持ちになっていて。昨年分の確定申告では収入が少なくてびっくり(笑)。

小池 私もすごく少なかったなあ。

川上 そういえば小説書いていなかったわということにハッと気付いた。

小池 その意味でも書くこと以上に楽しい仕事ですよね。

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