寄せ集めの原稿を羅列しただけでは、一冊の本として美しくない。美術館でも鑑賞順路というものがある。しかしゴシック&ロリータのムック本『Gothic & Lolita Bible』に書いた詩編と『BAILA』や『美的』という大人のコンサバ女子の雑誌に連載したものを、どう並べりゃいいというのかね?
で、考えた。書物をデパートに見立てようと。そうすると縦軸が出来る。最初を1Fとして「ベビーと生誕のフロア」にする。その次は「ティーンとファッションのフロア」。こういうふうにして6F「乙女と宝飾のフロア」まで辿り着くのだが、まだ屋上「天使の遊園地」がボーナス・トラック的に残されている。ここには『ダ・ヴィンチ』の大島弓子特集で書いた大島弓子へのオマージュとしての小説といえば小説かもしれない短い物語を充(あ)てた。シンプルだがとても気に入っている作品だ。
しかしデパートメントの体(てい)にするには大幅な書き換えをしなければならぬ原稿もあり、工事は難航した。工事というのはおかしな表現だが、こっちの原稿をここに持って来てこれはここにこう入れて、と編集する作業は建設をしているふうだった。まさにデパートを作る意気込みだったということかもしれない。担当編集者はなーんの知恵も出そうとしないので、作業は全部、一人でやった。結果、各章だてはデパートのフロアのイメージだから、そこにはエレベーターガールの案内を模した文言を入れよう――そしてそれを絡げていくと一つの物語になるという入れ子のトリックを取り込もう――というような凝ったことまでしてしまった。であるからこのエッセイ集に関しては、書かれていることの中身以上に構成の面白さに関心を払って貰いたい。
今回、装画を三山真寛(まひろ)さんにお願いした。BABY,THE STARS SHINE BRIGHTのジャンスカなどの図柄を手掛ける画家さんである。非常に丁寧であるが故に筆が遅い、一作仕上げるのに恐ろしく労力を掛けるタイプだと聞かされていたので、既存の作品を貸して貰うつもりでのオファーだったのだが、この文庫の為に描き下ろして下さった。部屋の中にボーダーのオーバーニーを穿(は)いている少女がいて、後ろにトランプ柄のハットボックス。前にはウミガメ、黒猫、ウサギ、リス……。アリスである。マジに。可愛い。加え、各フロアの扉に入れる罫線までお願いしていないのに描いて下さった。
従い、非常に豪華な装幀になりました。グランドオープンって感じです。
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『赤毛のアン論』松本侑子・著
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