インタビューほか

“ヤクザ”が料理をしている理由とは

「本の話」編集部

『侠飯』 (福澤徹三 著)

12月に文春文庫から刊行される『侠飯(おとこめし)』は、“ヤクザ”が御取り寄せとグルメ(B級ですが)にこだわる、まったく新しい異色グルメ小説。自身も料理がとても好きだという著者の福澤徹三さんに話を聞いた。

――“ヤクザ”の柳刃は良太の部屋から動かず、ストレスを発散するかのごとく料理に打ち込んでいる。料理のことぐらいしか会話のないふたりだが、次第に良太は柳刃を認めるように……。

『Iターン』では北九州のヤクザにからまれたリストラ寸前のサラリーマンがヤクザにカツを入れられていましたが、福澤さんの書くアウトローはとても生き生きとしていますね。

 昭和の時代、男のかっこよさっていうのは任侠だったと思うんです。任侠とは必ずしもヤクザのことじゃなくて、弱きを助け強きをくじく、いざとなったら己を捨てる自己犠牲の精神です。そういう任侠に生きる「男」がかっこいいという共通認識があったから、若者はそれを軸に目指す方向を考えられたし、物事の善し悪しを測りやすかった。

 ところがいまの時代は「男らしさ」が単なるマッチョや不器用さだととらえられていて、効率的で結果を求める生きかたが主流になっています。効率的で結果を求めるのは経済の考えかたであって、任侠の精神とは対極にあるものです。自己犠牲なんて非効率の極みですからね。人生において経済効率を第一とする風潮は若者にも広まっていますから、金持が尊敬され貧乏人はさげすまれる。

 昔は地域社会が機能していたので「街場のかっこいいひと」というか、その町のヒーローがいました。そういうひとは往々にして貧乏なんだけど、生きかたで尊敬されている。いまはそういう人種は絶滅して、ブラック企業の経営者のように他人を犠牲にしてでも金を独占する人種が尊敬の対象になっています。でも、そんな経営者のもとに集まるひとは、ひとじゃなく金を尊敬してるだけなんで、金の切れ目が縁の切れ目です。仕事だって料理だって、儲けや効率ばかり優先してたら、いいものはできない。あえて面倒なことをやるのは非効率的だけれども、そこに「人生の味」があるんじゃないでしょうか。

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