──『バッテリー』や『ありふれた風景画』など十代の少年や少女を主人公にした青春小説で多くの読者を獲得してきたあさのさんですが、今回、大人の女と少年の恋愛に的を絞った小説に初挑戦ですね。
あさの 少年同士や少女同士など、同性同士の関係に面白さを覚えていたので、「別册文藝春秋」から恋愛小説でという依頼がきたとき、自分に本当に書けるのかどうか、恐々(こわごわ)で、手探りの状態でした。
──女子高生二人の関係を描いた『ありふれた風景画』の中にも、十代の少年と二十代の女性の恋愛話が少し出てきますが、結局は結ばれない少年の悲恋に終わります。今回は十七歳の少年と三十四歳の女性という、倍の年齢差のある二人の物語ですが、こうした場合、年齢差が問題となって、燃え上がるけれども終わりにむかって走っていくというような、最終的にはうまくいかないラストを想像しがちなのですが、これは二人の関係の先に光があるのが特徴的ですね。
あさの 若い人を主人公にしたので、お互い傷つけあったり憎んだりして齟齬(そご)がありながらも、最終的にはともに生きていくというような恋愛を最初から考えていました。
意識していたことが二つあって、希望にむかって、というと言葉が稚拙なんですけれども、ともかく一歩前に、たった半歩でもいい、前に踏み出したところで物語が終わる恋愛を書こうと思っていたんです。あともう一つは、たとえば歳下の少年が愛を知って成長していくというような、ひと夏とかある一定の時間の、期間限定のものにはしたくないというのをすごく意識していました。
三十四歳の女が十七歳の男に教えることや与えることがあるその反面、十七歳の少年も三十四歳の女性に与えるものがあるんだと、自分で確認したかったということもあります。
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