──「世襲議員」の定義にはいろいろありますが、ある程度の幅をもって計算しても、自民党の場合は40%近い率で世襲議員がいるというデータがあります。地方の議員や首長の二世まで含めると50%を超えるという説もあります。ここまで増えた経緯をどう考えていますか?
上杉 世襲を支える仕組みとして真っ先に頭に浮かんだのは、後援会の役割です。利権を壊さないという共通の目標があるので、後援会が世襲を求め、世襲が後援会を必要とする、という構図があります。既得権益を守ろうとするこうした動きは、新しい人材にとっては強い参入障壁になるだろう、と予想していました。
ところが、取材を始めてかなり早い段階で、政治資金管理団体の無税での相続という話を聞いたのです。
──親の政治資金を子どもが無税で引き継ぐ世襲のからくりですが、「週刊文春」でこれを報じたときには大変な反響だったそうですね。
上杉 これは永田町でもいまだに話が出ますね。ど真ん中のストライクだったんです。この問題を扱うなら、今後はおまえの取材は受けないぞ、と言われたこともあります。
でも僕は、そう言われるとますます書きたくなるんですよ。この前もある新聞社主催の講演に呼ばれたんです。そうしたら直前の打ち合わせで、記者クラブ制度を批判した僕の本『ジャーナリズム崩壊』の話になって、「今日はこの問題には触れないでください」と言われたので、予定を変更して思い切りその話をしました(笑)。
とにかく、世襲議員が相続するいわゆる「三バン」、地盤(後援会)、カバン(政治資金)、看板(知名度)にからめて言えば、看板は中でも一番影響力が小さいだろうとは思っていました。たぶん最大の問題は地盤、つまり後援会の問題なのかな、と予想していたら、実はカバン、要するにカネの問題だったんです。
二世議員がここまで増えたのは世襲文化が好きな日本人の国民性の問題、という意見もありますが、ただそれだけでは現在の事態にはならなかったでしょうね。伝統があるものが好き、というならむしろヨーロッパやアメリカの方が、古きよきものを重んじる傾向が強いですから。
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