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消えた仮想通貨を追え!<br />公安捜査のリアルを描くシリーズ最新作

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公安捜査のリアルを描くシリーズ最新作

「本の話」編集部

『警視庁公安部・青山望 濁流資金』 (濱嘉之 著)


ジャンル : #エンタメ・ミステリ

青山と仲間たち〈同期カルテット〉
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――本作の主人公である「青山望」は、中央大学剣道部出身で公安部の情報マンとして活躍する警察小説としては異色の主人公です。一方で、地方にも幅広く人脈をもち、例えば地元のグルメ情報なんかにも異様に詳しかったりします(笑)。どういう経緯で、青山という人物を考えつかれたのでしょうか。あるいは濱さんは、青山望という人物をどういう人間と見ているのでしょうか。

 公安部の中で「情報マン」と評されることはある意味で誇らしいことです。

 この情報の中身も天下国家を揺るがすような中枢情報から、様々な事件情報まで幅広いものです。

 この情報を得るためには、各人に広い人脈に加え「深い良識と広い常識」が資質として求められます。そして人と交流するには様々なシチュエーションを考えなければなりません。飲食を共にする場面も実に多いのが実情です。

 ですから食に詳しいというのは、人と接する際の条件の一つでもあるわけです。十年来流行りの朝食を取りながらの情報交換から、ランチを共にして……というのが社会の流れになっていますが、やはり夜の会合では相手が家庭を大事にする外国人であってもディープな情報を得る絶好のチャンスであることは同じです。ですから、安心して飲食を共に出来る場所を多く持つことも情報マンにとっては大切なことなのです。

――強行犯一筋で腕っぷしも強い藤中克範は、4人のなかでも印象的な存在です。いわゆる世間の思い浮かべる「デカ」のイメージに近い存在のようにも思えますが、濱さんは、藤中という人物をどうご覧になっているのでしょうか。

 捜査一課の捜査員は刑事を目指す者の中では憧れの世界です。

 刑事になっても捜査一課が花形なのは間違いありません。殺人、強姦、放火、誘拐など、最も重大な法益である人の生命身体を直接脅かす犯人を捕まえるスペシャリストが捜査一課の捜査員だからです。

 そのリーダー的存在である藤中は、事件が起きれば動くだけの強行犯捜査員ではありません。事件の背景を調べ上げたうえで、その背後で実行犯を操る巨悪に鉄槌を喰らわせることを常に考えている存在です。

 その背景にあるのは、ラグビーで培ったチームプレーと巨体ながらスタンドオフというポジションで仲間を動かす能力があってのことなのです。それ故、青山や龍、大和田たちのような組織犯を捜査する仲間との情報交換にも情熱を燃やす、珍しいタイプの捜査一課捜査員なのです。

――早稲田大学野球部出身で、人事一課というエリート街道を歩んでいる大和田博は、一方で暴力団情報のスペシャリストというちょっと意外な一面も持っています。大和田という人物についてはどうでしょうか。

 警視庁内の最強エリート集団が人事第一課であることは、組織内のものならば誰しも否定しない事実です。

 大和田もチームプレーの中で育ち、捕手というキーポジションで育ってきました。

 人事第一課の職員といえども、巡査部長時代に刑事や公安を経験した者は多くいますし、特に監察のセクションは公安部で追尾、張り込みを経験した中で優秀な者が一本釣りされている場合が多いのです。

 暴力団捜査は刑事部の捜査第四課から組織犯罪対策部に、生活安全部の銃器薬物対策課等と一緒に移った組織です。近年、昔ながらの肩で風切るようなヤクザは少なくなり、フロント企業と呼ばれる、知能犯的に金を稼ぐことができるグループが実力をつけてきているのです。従って、警察もこれまでどおりの捜査手法では反社会的勢力と戦うことができなくなっています。その捜査の最先端を進めてきたのが大和田だったのです。

――関西学院大学アメフト部出身で、関西弁のイントネーションが印象的な龍一彦の存在も利いてます。知能犯担当ということで、他の3人に比べるとちょっと肌合いが違って見えますが、濱さんはどうご覧になっているのでしょうか。

 警視庁警察官で関西弁を使うのは勇気がいることです。龍も普段は出来る限り標準語を使っていますが、気を許す同期生の前では素に戻ってしまうのです。

 そんな龍が警部補、警部、警視と3階級にわたって勤務する、知能犯捜査の本丸が捜査第二課です。捜査第一課が刑事の花形ならば、捜査第二課は刑事のエリート集団です。国内47都道府県警察の捜査第二課長はほとんどがキャリアです。そのような組織は他に類を見ないのです。それだけ警察組織が知能犯捜査を重要視している証でもあります。

 常にキャリアを上司に持つ捜査第二課の中で捜査員としての存在感がなければ、同所属で何度も勤務することはできません。資質を認められ、キャリアからキャリアへの申し送りとして警察庁人脈も広めていくと、事件捜査だけでなく、事件情報の収集・分析力が期待されてくるのです。

 そこに同期3人との情報交換というものが重要な意味合いを帯びてくるのです。関西人に見られる挨拶の一つ「儲かりまっか?」は情報を求める意味合いがあります。そんな龍を他の同期3人は理解しつつ、その才能を認め合っているのです。

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警視庁公安部・青山望 濁流資金
濱嘉之・著

定価:本体640円+税 発売日:2014年09月02日

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警視庁公安部・青山望 機密漏洩
濱嘉之・著

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