──万城目学さんの新刊『プリンセス・トヨトミ』は大阪を舞台にした奇想天外な小説です。これまでの作品では、オニや喋(しゃべ)る鹿などが登場しましたが、新刊では意外にも(?)会計検査院の調査官という、実にリアルなお堅い人たちが活躍します。この調査官を登場させるきっかけのようなものはあったのでしょうか。
万城目 お金の流れを追っているうちに、何かとんでもないところにたどり着くという物語の進め方をしています。会計検査院は国の決算のチェックをするのが仕事なので、そこから出てきました。もし、調査の過程でおかしなことがあったときに、警察の場合、違法性があると即犯罪になってしまい、話を展開していく上で広がりがなくなってしまいます。警察や検察といった捜査機関でもなく、弁護士、新聞記者といった正義を追求する人種でもない、会計検査院の調査官は税金の使い道を調べて無駄かどうかを判断する、特殊な価値基準の中で働いている人たちなので、相応(ふさわ)しいのではないかと思いました。
──きわめて特殊な官庁ですから、取材も大変だったのではないでしょうか。
万城目 資料を読み込んで、実際に会ってお話も聞きましたが、調査の詳しい内容まではなかなか教えてもらえませんでしたね。ただ、キツキツの杓子定規というのでなく、「いやいや、僕らなんか」という感じの気さくな方もいらして、おっちょこちょいだが偽造書類発見などには異能を発揮する鳥居など、調査官の人物造形に幅ができました。
──小説の中で骨のある調査官、副長・松平が役人の税金の無駄遣い、いい加減さに、憤りをもつ表現がありますが、これは万城目さんの心情の吐露でしょうか。
万城目 税金の使い道に対してですか? いえ、そういうわけではないです。会計検査院の調査官の人たちの気持になって、少し大げさに書いてみました。
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