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戦後を生き抜いた愛すべきはずれ者たちの悲喜劇

戦後を生き抜いた愛すべきはずれ者たちの悲喜劇

「本の話」編集部

『笑い三年、泣き三月。』 (木内昇 著)

出典 : #本の話
ジャンル : #小説

画:伊野孝

――この武雄の造型が、通り一遍でないところがいい。

木内  大人が子供を描くとき、子供らしい子供を一所懸命つくろうとしていることがあり、ちょっと違和感がありました。子供って実はいろいろ考えていたり感じたりしていると思います。だから、周りの子供を観察するというよりは、自分が子供のときってどう思っていたかなあ、と内面に立ち戻って考えるようにしていました。武雄の父親は印刷工場を経営していたんですが、うちも商売をやっていたので、武雄が見知らぬ大人を見かけて、親に「今の人、誰?」「今の人が話していたこと、本当?」って陰で聞いたようなことを私もやっていたんです。どういうふうに世の中と接していたかなあとか、ここまでは聞けたけど、ここまでは聞けなかったなあとか、ある程度子供も演技しますけど、どこまで演技していたかなあとか、そういうことを思い出しながら書いていました。

――「八十歳に至るまでの人生予定表」を作っていたり、面白い男の子ですよね。木内さんは『漂砂のうたう』の定九郎もそうですが、男性の色気や屈託を描くのが非常に上手ですよね。でも、今回はとびきり魅力的な女性も登場します。踊り子のふう子さん。容姿はいま一つだけれど体が抜群で、性格も何ともいえず福々しい。光秀から「おかめ、おかめ」と罵られても柳に風と受け流し、武雄からはほんのりと慕われる。

木内  男だけの物語にしようと思ったのですが、「女っ気が欲しい」と注文されて。マドンナ的ではなく、「変わった女の子」にしようと思って。彼女の造型は挑戦でした。

――『漂砂のうたう』の凜とした小野菊花魁とは全く違いますが、苦労人だけあって数々の名台詞が彼女から放たれます。

木内  台詞といえば、「人間、笑いたいときに笑えて、泣きたいときに泣けたら、だぁれも映画や実演なんか観ようとは思わないのよ」というミリオン座支配人の台詞が私の周囲では受けていました。

――書名『笑い三年、泣き三月。』とはどういう意味ですか。

木内  義太夫節の修業で使われる言葉で、人を泣かせる芸は3ヶ月で完成するが、笑わせる芸には3年かかる、ということです。

笑い三年、泣き三月。
木内昇

定価:本体820円+税発売日:2014年05月09日

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