書評

高齢になってもずっと元気に

文: 堀江 重郎 (順天堂大学・順天堂医院泌尿器科医師)

『ヤル気が出る! 最強の男性医療』 (堀江重郎 著)

 日本は20年以上にわたって、男女ともに平均寿命世界一を維持しています。しかし、男性の寿命は女性より7年も短い。旧ソ連諸国ではだいたい差が10年、デンマーク、スウェーデンなどは4年ですから、世界の中くらいで、決して優等生とはいえません。

 わが国の生活環境や医療技術を考えても、男性の寿命はもっと伸びていいはずなのです。

 女性は、育児や親の介護にかかわるため、医療機関へのアクセスが身近で、自ずと健康意識が高くなりますが、男性は病院から遠ざかりがちです。統計で、日本の女性が近年、スリムになっているのに対し、男性は各層で太り続けているのも、その表れといっていいでしょう。

 私の専門は泌尿器科です。長年、前立腺がん、男性更年期、うつ、男性不妊症、そしてEDといったメンズヘルスの治療に力を入れてきました。その経験を踏まえて、特に40歳以上の男性に知っておいてほしい医療知識を紹介し、元気溌剌な生涯を送るために役立ててほしい、というのが本書を書いた狙いです。

 私の外来に来られた患者さんには、まず男性ホルモン「テストステロン」値を測定してもらいます。テストステロンは本来、人間の体内で作られていますが、加齢とともに減っていきます。そして減少することが、様々な病気につながっているのです。

 たとえば、うつ。従来、うつといえば、「精神的に脆い人がなりやすい」というイメージがありましたが、これは大きな誤解です。特に高齢になってから発症した場合は、テストステロンが減ったことが原因であることが多いのです。

 私が実際に診察した患者さんの例をお話ししましょう。

 この方は定年退職したのち、60代後半で重度のうつ症状となり、心療内科で大量の抗うつ薬をもらっていました。一方で、家の階段を手すりに掴まらないと上り下りできないほど体の節々が痛むので、整形外科で痛み止めももらっていました。外出も億劫になり、医者に行く以外は、家に引きこもる毎日を過ごしていたのです。

 私の外来でテストステロンを測定してみると、非常に低い値でした。そこでテストステロンの補充療法を開始すると、まず体の痛みが消え、手すりに掴まらなくても、階段の上り下りができるようになりました。そして、外出もできるようになり、うつ症状も快方に向かいました。半年後には、長らくやめていたゴルフを再開するまでになりました。

 この患者さんが、うつと体の痛みを訴えたように、テストステロンが低下すると、様々な病気を併発させる危険性があります。テストステロンは「社会性のホルモン」とも言われ、これが減ると、外出したり、人と接するのを避けたくなる傾向もあります。

 また、中高年になると、「歳をとったらEDになるのはしょうがない」と諦めている男性が多いようですが、これも大いなる誤解です。EDも、加齢とともにテストステロン値が低下することが原因である場合がほとんどですが、補充することで、正常な勃起状態に戻すことができます。人によりますが、80代になって性生活を楽しむことも、十分可能なのです。

 むしろ、EDを放置することは、危険ともいえます。なぜなら、狭心症、心筋梗塞や脳梗塞を起こした方には、EDの兆候があったケースが多いからです。

 EDはれっきとした血管の病気です。EDの陰には深刻な病気が隠れている可能性もあるのですから、「EDの治療に医者に行くのは恥ずかしい」などと考えず、堂々と診察を受けてほしいと思います。

 逆に、中年以上になっても、ほぼ毎日「朝立ち」があるなら、健康な証といえます。テストステロンが少なくなると、朝立ちもしにくくなります。また、仕事がうまく行かない、などの心配事があると、それがストレスとなって勃起のメカニズムに支障を来しやすくなります。

 つまり、朝立ちがあるということは、テストステロンが正常で、深刻なストレスもない何よりの証拠なのです。

 日本はいま、歴史上かつてない超高齢社会を迎えています。医療費のこれ以上の膨張を止めるためには、予防の意識を広めることが大事だと思います。それには、テストステロンの検査も、大きな役割を果たせるはずです。保険適用で、1回数100円で済みます。

 それにより、高齢者になっても健康な生活が期待できるのですから、まさに一石二鳥というものです。企業健診にも、テストステロン検査を導入すべきではないでしょうか。

ヤル気が出る! 最強の男性医療
堀江重郎・著

定価:756円(税込) 発売日:2013年06月20日

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