社団法人東京放送局(今のNHK)がラジオ放送をはじめたのは、大正十四年。当時、会長職の上に総裁が置かれ、初代総裁には後藤新平が就任した。台湾の民政長官や満鉄総裁をつとめ、関東大震災後は、内務大臣兼帝都復興院総裁として壊滅的な打撃をうけた東京の復興をめざした傑物である。後藤はこのとき気宇壮大なプランを立てて「大風呂敷」とも揶揄されたが、放送開始を期に、
「現代における光輝である。これを精妙に活用するなら、将来の社会に重大な価値を与え、民衆の生活の枢機を握るに至るであろう」
と力強く挨拶している。翌十五年には早くも聴取者数二十万人を突破、社員の総意で後藤の胸像を作る運びとなった。胸像は今も愛宕山のNHK放送博物館に鎮座している。写真は高村光太郎と並ぶ重鎮・朝倉文夫(胸像の右・白衣の男性)が制作した後藤新平像を、本人とともに撮影したものである。
この写真を始め、文藝春秋は戦前の貴重な写真を昭和四十年代にNHK関係者から買い取った。その数三千四百点に及ぶ。これからその幾つかを紹介してみたい。
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