- 2012.02.03
- 書評
下剤や食物繊維が逆効果! スーパー便秘にご用心
文:山名 哲郎 (社会保険中央総合病院 大腸肛門病センター部長)
『スーパー便秘に克つ!』 (山名哲郎 著)
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スーパー便秘の人は、慢性便秘の3分の1を占めると言われるぐらい多いのですが、病態が詳しく知られるようになったのは、最近のことです。海外での症例が学会で報告されたり、腸の状態をレントゲンで検査できる排便造影検査が導入されるようになったのは、ここ10年ほどのこと。ですから、いまでも内科の開業医の先生の間では、スーパー便秘のことを知らない人が少なくありません。そのため、普通の便秘だと診断され、誤った治療を施された結果、なかなか症状が改善されなかった患者さんも多かったのではないでしょうか。
スーパー便秘のなかでも、直腸にポケット状の袋が出来る直腸瘤であれば手術が有効であるし、肛門の開け閉めに問題がある場合は、バイオフィードバック訓練といった理学療法が適しています。
本書では、スーパー便秘の改善法や治療法をわかりやすく解説しました。また、スーパー便秘以外の便秘についても、それぞれの症状に適した対処法を具体的に書きましたので、ぜひご参考にしてください。
日本でも食生活が変わり、肉やたんぱく質を多くとり、ご飯や野菜など食物繊維を含む食品をとる量が減った結果、便秘の人が増えています。統計によれば、全人口の約10パーセントが便秘に悩んでいると言われています。
しかし、そもそも便通というものは個人差があるもので、必ずしも毎日排便がある必要はありません。一般的には1日3回から、3日に1回くらいまでなら正常です。
ところが、「1日1回は出さないといけない」という強迫観念に陥り、便意もないのに長時間トイレでいきむ人が多い。普通はまず便意が起こり、腸の収縮によってリラックスした状態で排泄が行われるのが自然です。いきむこと自体、不自然であり、強くいきむことを続けることで、結果として便秘が悪化することが多いのです。
下剤にばかりたよるのも考えものです。市販薬の多くは刺激性下剤といって、大腸粘膜に刺激を与えることで大腸の蠕動作用を活発にし、排便を促すタイプのものです。しかし、服用するうちに腸が刺激に慣れて、腸の反応が鈍くなる。そのため服用量が多くなり、便秘がエスカレートするという危険があります。
いま、日本人の間で大腸がんが急増しています。便秘の人のなかには、便秘が続くと大腸がんになるんじゃないか、と不安にかられる方が多くみられます。3日くらい便が出ないだけで、「大腸がんになるのでは」と心配し、安易に下剤に手を出す方が少なくありません。しかし、便秘と大腸がんの発生頻度にはまったく関連性がないことが統計的に証明されています。過度に恐れる必要はまったくありません。
便秘は深刻な病気ではありませんが、なんとも悩ましい症状です。本書では、大腸肛門外科医として日頃の診療経験から得た便秘への対処法を詰め込みました。便秘についての正しい知識をもっていただき、食事や生活習慣を見直すなど、改善できることを試してほしいと思います。
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