次の工程は「接着」。束ねられた1冊分の紙の背中(背表紙部分)を接着剤に浸し、表紙と貼り合わせます。接着剤は白い液体で、「ホットメルト」というものとのこと。約160℃に温めたホットメルトで接着して、これが冷めると完全にくっつくんだそうです。
「どうぞ触ってみてください」と、接着されたての本の背表紙を触ると、確かにほんのり温かくて、まさにできたて「ホヤホヤ」です。
高温で液体、冷めて固形に、というホットメルトなので、本は高温に弱いそうです。「サウナで置いたままとか、車のボンネットに置きっぱなしだと、本の中身が抜けてしまうかもしれませんね」とのことなので、皆さん、暑いとこでの本の取り扱いには注意しましょう。でもお風呂程度だったら大丈夫だそうです。私も若い頃、暇にあかせてお風呂で『竜馬がゆく』を読破しましたが、しわしわになっただけで中身が抜け落ちることはありませんでした。
さてお次は「断裁」。背表紙以外の三辺を、機械がガッチャンコガッチャンコと切っていきます。これで本は完成。あとはカバーと帯を掛けるだけです。私の本は断裁までのラインだったので、カバーと帯のラインでは別の本を見学したんですが、こちらの本は司馬遼太郎・著『夏草の賦』。おお……また重版ですか……これで何刷り目なんだろう。『夏草の賦』が終われば、ここで私の本にカバーと帯が巻かれるわけですね。うーん、あやかりてぇ。
見学した文庫本のラインでは、1時間に1万冊の製本ができるとのこと。私の本の初版部数なんてあっちゅう間です。1時間に1万冊の本を作るため、従業員さんたちは無駄な動きひとつなく、しかしひとつひとつを丁寧に、まさに「職人!」なお仕事をされていました。これまで、読者のみなさんのために、ちゃんと価値あるものを書かなきゃなぁと思っていましたが、今回、製本作業を見せて頂いて、この職人さんたちの背中にも恥じないものを……と改めてお腹に力が入りました。
そして、「もっと本を大事に扱おう!」とも。みなさん、本は大事にしましょうね。私も「『竜馬がゆく』はお風呂で読んだからしわしわで膨らんじゃったんですよテヘペロ」とか言ってる場合じゃないです。すみません。
というわけで、以上、この世に生を受ける瞬間の「本の話」でした。
(取材協力:加藤製本株式会社 katoseihon.com)
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