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地方の書店の魅力とは?<br />&東日本大震災の関連本について

地方の書店の魅力とは?
&東日本大震災の関連本について

「本の話」編集部

知っているようで知らない書店のことについて、全国各地の書店員さんが顔出しで回答する「10人の書店員に聞く<書店の謎>」。今回は、地方の書店の課題と魅力、東日本大震災から3年半を過ぎた関連本の状況についてお答えいただきました。

 JR倉敷駅(岡山県倉敷市)に近い商業施設内の書店がこの7月に、またJR福山駅(広島県福山市)に近い商業施設内の書店がこの8月に、閉店しました。地方都市の商業施設に入る書店が営業し続けるためには、何が大事だと思いますか?(広島県 30代 男性)

 

野坂美帆(紀伊國屋書店富山店)

 岡山は大学時代を過ごした懐かしい街です。倉敷市や福山市の話は存じませんでした。新規出店される、というニュースがある一方で、閉店のニュースもある、業界は動いているのだなあと感じます。営業し続ける、ということについては、私は経営職ではありませんので、ご期待に添う回答が出来ないのではないかと思います。地方都市の商業施設内店舗の書店について何が大事なのか、売り場目線で考えますと、いかに客層に合った商品展開をするかということと、自店の集客力を上げる、ということでしょうか。商業施設が駅に隣接しているのか、郊外型なのか、百貨店なのか、ショッピングセンターなのか、立地に合わせて色々な戦略戦術があるかと思います。路面店であれ、商業施設内であれ、地方都市であれ、都心部であれ、自店のお客様を分析し、理解するというのが売り場ではまず不可欠な一歩かと思います。

 

地方は、なぜ本が遅れてくるの? (広島県 30代 女性)

 

内田剛(三省堂書店神田神保町本店)

 物流上、やむをえないですね。メーカーである出版社と物流の拠点である取次会社が、首都圏にあるためです。都心でも流通便の関係で、入荷が前後することもあります。

 

売れ行きの違いやご当地本、地方の書店が面白い

 ちょっと世知辛い話題が続いたので、次はこんな質問を。

売れる本に地域性は感じますか。(福岡県 30代 男性)

 

高橋佐和子(山下書店南行徳店)

 埼玉県と千葉県の書店を経験していますが、新聞に載ったときやテレビで放送された場合は、基本的に同じ本が売れます。しかし、そういった媒体で紹介されていない本で売れる商品は、地域によって大きく変わります。同じように展開しても、一店舗では100冊売れたのに、一店舗では3冊……なんて苦い経験もしています(涙)。

 

 

筒井陽一(リブロ名古屋店)

 感じます。タウンガイドやご当地グルメが動くのは当然なのですが、その店の本来的な売筋はお客様層と、立地によって大きく変わります。「そこがどういう街なのか、エリアなのか」です。ターミナル駅、駅前繁華街、郊外モール、超弩級の歓楽街、ファッションビル……。あの店では3日たっても見向きもされないアイテムがなんとこの店では秒殺かっ!? 等、ザラです。面白いです。

 

 

野坂美帆(紀伊國屋書店富山店)

『定本 黒部の山賊 アルプスの怪』 (伊藤正一 著/山と渓谷社)

 感じます。弊店は特に地元関連書籍を大事に販売する姿勢をとっていますので、地域性も顕著に表れているかもしれません。また、立山連峰のお膝元という地理的特性から、山岳関連本もよくお求めいただいています。今年は春以降、『定本 黒部の山賊 アルプスの怪』『アルプス交番からのメッセージ』『富山の百山』などの書籍が富山店週売ランキングでも好調を維持し、併せて「山と渓谷」「岳人」などの山岳雑誌も昨年以上の売れ行きでした。自分の担当部門内では、公共交通関連本、都市計画・まちづくり関連本の売れ行きがよく、ライトレールなど先進的な公共交通網を完備し、コンパクトで機能的な都市である富山市らしいなあと感じています。

 

 

二村知子(隆祥館書店)

『宇宙を目指して海を渡る』 (小野雅裕 著/東洋経済新報社)

 大阪の本当の姿を映し出している作品に出会うとお薦めしたくなります。『間宮吉彦の「間」』(140B発刊)では、デザインされた大阪の中之島などのおしゃれなスポットや、建物を紹介していて、今も常備しています。また、近くに直木賞で有名な直木三十五の生家跡があり、直木三十五記念館で毎年行われている“勝手に直木賞”などでも盛り上がるので、直木賞候補作や受賞作は欠かせません。
 そして、地元高津高校から京大へ進んだ織田作之助の本には、当時のこのあたりの様子や、オットセイのお肉が販売されていたことなども書かれてありその当時の大阪の様子がうかがえるので常備しています。学生時代に、織田作之助賞青春賞を受賞された小野雅裕さんの『宇宙を目指して海を渡る』(東洋経済新報発刊)も、著者が大阪出身ということもあり読むきっかけとなりましたし、当店の「作家さんとの集い」にNASAジェット推進研究所からご登場いただきました。

東日本大震災から3年半。関連本の扱いは?

 地方の話題が出たところで、東日本大震災に関連した質問をご紹介します。

仙台在住の本好きです。東日本大震災後、震災関連の本がたくさん本屋さんに並びましたが、3年半たった今では、新刊の数も、本屋さんで手にできる種類も、以前と比べてだいぶ減ってきたように感じます。あの震災を忘れず次の世代に伝えるためにも、次に起こるであろう災害に備えるためにも、震災関連の本はまだまだ大切な役割を担っていると思います。皆さまのお店での現在の震災本の品揃え、また、これからの震災本のお取り扱いなどについて、よろしければ教えてください。(宮城県 40代 男性)

 

栗原浩一(あゆみBOOKS仙台青葉通り店)

『河北新報のいちばん長い日 震災下の地元紙』 (河北新報社 著)

 当店は被災地なのでまだ震災・原発コーナーはあります。ただ、原発関連の書籍は新刊がでていますが、震災のものは新刊も少なくなりましたし売れゆきもよくないです。そんな中でも、河北新報社の『みやぎの海辺 思い出の風景』や文春文庫の『河北新報のいちばん長い日』、新潮文庫の『遺体』など今でも売れ続けている作品もあります。スペースは小さくなっても、良書をセレクトしあの日の出来事を伝えていくのが、私たちの役目だと思っています。

 

内田剛(三省堂書店神田神保町本店)

 この世に無くしてはならないことはたくさんありますが、震災関係の本も書店の棚に必備です。なくてはならない本です。災害に対して無力を痛感した僕らにとってできることは、その記憶を忘れずに伝えることです。月日が経つとどうしても、品揃えが少なくなってしまいますが定期的に棚をチェックして、お客様にご提案をしていきたいと思います。

 

野坂美帆(紀伊國屋書店富山店)

 震災当時は別の書店に勤務しておりましたので、弊店でどのように震災関連本を扱っていたかはわからないのですが、自分が入社した2年前から現在にかけて、震災に関連する書籍は社会科学、自然科学、文学の3カ所で、それぞれの商品の内容に合わせて展開しています。発行点数に合わせて各売り場の規模も変化していますが、お客様に必要とされるであろう書籍は各担当品揃えしております。逆に、発行点数が減ってきたことで、お客様に本の内容をよく吟味していただけるような売り場環境が整えられるのではないかという気もします。また、震災から年月が経つことで検証できるものもあると思います。それは商品にも表れています。そういった商品の特性を見ていただけるようにしなければならないと考えています。

 

二村知子(隆祥館書店)

『地名に隠された「南海津波」』 (谷川彰英 著/講談社+α文庫)

 現在も、隆祥館書店で、常備している震災関連の本です。
『地球の声に耳をすませて-地震の正体を知り、命を守る』(大木聖子著/くもん出版)
『大地震!とっさの行動マニュアル』(山谷茉樹/廣済堂出版)
『自分と子どもを放射能から守るには』(ウラジーミル・バベンコ/世界文化社)
『地名に隠された「南海津波」』(谷川彰英/講談社+α新書)
『知りたくないけれど、知っておかねばならない原発の真実』(小出裕章/幻冬舎)
『食べる? 食品セシウム測定データ745』(ちだい/新評論)
『緊急!池上彰と考える巨大地震 その時命を守るために…』(池上彰、「緊急!池上彰と考える巨大地震」スタッフ /海竜社 )
 先日の、広島の土砂災害で一番酷かった八木地区の昔の土地名「八木蛇落地悪谷」は「蛇ですら落ちる」との意。昔の人は、「ここは危険なところだよ。」と、地名で伝えようとしてきたことがわかります。命の大切さを、重んじていたからこそ後生に伝えようとしていたのではないでしょうか。地名に隠された危険な地域の本を置きたいと思っています。

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