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「志があって俳優になった訳ではない」高倉健が演じ続けた人物像とは

「志があって俳優になった訳ではない」高倉健が演じ続けた人物像とは

文・写真:「文藝春秋」写真資料部


ジャンル : #ノンフィクション

「僕は、志があって俳優になった訳ではない。思いもよらない変化をかいくぐりながら、出逢った方々からの想いに応えようと、ひたすらにもがき続けてきた」(「文藝春秋」平成二十七年=二〇一五年新年号「高倉健 最期の手記」より)

 日本映画の黄金時代を担った高倉健は、昭和六年(一九三一年)、福岡県中間市に生まれる。昭和二十七年、明治大学卒業。就職難の時代に、芸能プロのマネジャーになろうとしたが、たまたま東映専務だったマキノ光雄に見出され、東映に入社する。

 昭和三十一年、日活の石原裕次郎とほぼ同時期に「電光空手打ち」で主役デビュー。昭和三十八年に出演した「人生劇場 飛車角」から、任侠映画中心に活躍する。「日本侠客伝」「網走番外地」「昭和残侠伝」シリーズに主演し、圧倒的な支持を得た。

 昭和五十一年、東映を退社しフリーとなる。独立後第一作「君よ憤怒の河を渉れ」は、中国で上映され大ヒットした。以降、任侠路線から離れ、「八甲田山」「幸福の黄色いハンカチ」「野性の証明」「動乱」「遙かなる山の呼び声」「駅 STATION」「南極物語」「居酒屋兆治」「あ・うん」「鉄道員(ぽっぽや)」「ホタル」そして遺作となった「あなたへ」など多数の映画に主演。平成十年、紫綬褒章を受章。平成二十五年、文化勲章を受章。このとき、「今後も、この国に生まれて良かったと思える人物像を演じられるよう、人生を愛する心、感動する心を養い続けたいと思います」との言葉を残した。

「スタッフたちのほおがげそっと削れていくころ、撮影が終わる。

 映画づくりのファミリーの中に定着していた時が過ぎ、おつかれさまの声で終わって、三々五々やりとげた満足感がやってくるが、燃やした火の灰みたいなものが残る。

 みんなと別れる寂しさがやってきて、また群れを離れてさすらう日々のしんどさを思うと、仕事はうまくいったのに、なぜか沈んでしまう日が待っている。

 もうこの次の仕事からは、気持ちなんか入れずに鼻歌まじりで口笛吹いてやるぞ、と思いながら、また次の仕事も、きっとクランクアップがつらくなるような人たちとの出会いを求めてるんでしょうね」(高倉健著『あなたに褒められたくて』より)

 平成二十六年十一月十日没。写真は、平成十二年、東宝の撮影所にて撮影。

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