こうしたマッチャー氏のレポートについて、少子化問題を日本で取材しているジャーナリストの白河桃子氏は、こう分析する。
「日本でも本書が話題になっているのは、バブル期に企業社会に入ってきたアラフィフの雇用均等法世代と、低成長期に企業社会に入った20代までの女性の価値観の違いに、ストレートにはまるためではないでしょうか。
無認可の保育園に子供を長時間保育で預けてボロボロになるまで働くよりは、生活の水準をそれなりに落としてでも、人間らしい暮らしをしながら、主婦起業を目指す若い女性が増えてきています」
男性も「ハウスワイフ2.0」に
ハウスワイフ2.0現象は、NHK「おはよう日本」(3月15日放送)でもとりあげられた。番組では、主婦たちの様々な才能を起業化するNPOを立ち上げた女性が紹介されていた。
「50年代までの主婦は孤独でした。いくら美味しいものを手間隙かけて作っても、いくら家事を楽しくする発明をしても、外に発信する手段がなかった。
しかし現在は、こうした情報をブログなどで発信すれば、コメントがつく。交換サイトでは自分の手芸を売ることもできる」(マッチャー氏)
マッチャー氏は完全なハウスワイフ2.0になるための条件として、次の4つをあげる。
・男性も手作り家事に参加してもらう。
・経済的自立を大切にする。
・ほどほどに恵まれている中流階級だと自覚する。
・社会全体の利益を考える。
ただ、ハウスワイフ2.0には、フェミニズムの立場からの批判も当然ある。「せっかく女性が企業社会で築きあげてきたものを無にする危険な動きではないか」という批判だ。
そのあたりはマッチャー氏も冷静に分析している。
「そもそもアメリカは、有給の産休が法律で企業に義務づけられていない先進国で唯一の国です。企業が、女性であることや人間であることにもっと寛容な体質に変化すれば、働く女性たちが組織を離脱する必要はないのです。しかし、70年代から企業は変わりませんでした」
前出の白河氏はこう語る。
「女性は、大きな社会の変化の、いわばカナリア的な役割を果たします。ハウスワイフ2.0は、先進国が共通して低成長に入ってきたことをうけて生まれているのだと思います。会社に24時間捧げる時代は終わりつつあるのです」
その意味では「男性も同じ」と、マッチャー氏はこう続けるのだ。
「ハウスワイフ2.0は、いま企業社会で燃え尽きかかっている男性にこそ、考えてほしい生き方でもあります」
IT化とグローバル化がますます進む近未来は、ひとつの会社でしか通用しないサラリーマンより、個人の職人的スキルへの需要が高まる。
「会社に使われない、人間らしい生き方」をしたければ、男女問わず、ハウスワイフ2.0に転身するのもいいかも?
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