「キャリア女性の時代は終わった」。こう宣言して、物議を醸している本がある。 『ハウスワイフ2.0』(小社刊)によると、ハーバードなどの一流大学を卒業し、投資銀行などに勤めていた20代、30代のアメリカの女性が続々と会社を辞め、主婦になっているという。しかも、ただの主婦ではなく「会社に使われない新しい主婦」に転身しているというのだ。
米国で昨年出版された同書は、「ニューヨーカー」や「ワシントンポスト」などでとりあげられ、大論争となった。日本でも翻訳・発売されるや、ネット上で、「旦那が高収入でないとこんなの無理」「わたしもこうなりたい」等々の熱い議論が沸騰している。
なぜこの本が、女性の間で熱い議論を呼ぶのか? 著者のエミリー・マッチャー氏(31)はこう語る。
「アメリカでも日本でも、女性にとって企業社会があまりにも過酷であることに、女性たちが気づいたからです。男性に伍して、管理職になろう、経営者になろうと、ガラスの天井を破ろうとした母親の世代はどうなったでしょうか」
たとえば同書には、母親がフィラデルフィアの銀行の副頭取までのぼりつめた31歳の女性が登場する。
「母は女性が世界を支配できると信じて疑わなかった。でも、母はいつも悩みを抱えていて、不治の糖尿病を患ってしまった」
そんな母をみて、彼女はつくづくこう感じたという。
「会社は仕事と家庭のバランスなんて気にも留めていない」「せっかく多才に生まれても、女性はその才能を会社に売り渡してしまうことになる」「家庭にいる時間を、どうして会社に決めさせるの?」……
会社より「人間らしい暮らし」を
アメリカでは「ジェネレーションY」と呼ばれるアラサー世代は、こうした疑問を抱き、組織を選択的に離脱して続々と主婦になっている。
ところで、同じ主婦でもなぜ「2.0」を謳(うた)っているのか?
「1950年代までの専業主婦は、人生を家事労働に売り渡し、孤独だという側面があった。それに対して、現在の新しい主婦たちは、選択的に会社をやめ、人間らしい暮らしを営むために家庭に入っているのです。しかも彼女たちは、家庭に入っても自分たちの才能を使って仕事をし、自己実現をはかろうとしています。だから旧来の専業主婦を古いバージョンの1.0だとすると、この新しい動きは2.0と言うべきものなのです」(マッチャー氏)
マッチャー氏自身、ハーバードを卒業後、地元の大学の研究室に就職したが、あまりにストレスフルな職場に嫌気がさして退職。ノースカロライナ州の長閑(のどか)な街で主婦をやりながら、もともと好きだった執筆業を始めた。
彼女の周囲の高学歴の女性たちが、同じように会社を辞めて主婦になり、編み物やジャム作りなどに夢中になったり、農園をやったりしているのを見て本書を書くことを思いついた。
200人以上の女性を取材した結果、マッチャー氏はハウスワイフ2.0現象が起こっていることを確信。ハウスワイフ2.0を次のように定義した。
・会社を選択的に離脱。
・企業社会で燃え尽きた母親の世代を反面教師にする。
・ストレスの多い高報酬の仕事より、ほっとできる暮らしを志向。
・田舎生活を楽しみ、ジャムをつくり編み物をする。
・ブログで情報発信し、起業する。
・家事を夫と分担し、余裕をもった子育てをする。
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