インタビューほか

近藤史恵インタビュー 「巨大団地からはじまるミステリー」

「オール讀物」編集部

『インフルエンス』

『インフルエンス』(近藤史恵 著)

「最初は同じ場所にいた友達も、大人になれば立場が変わり、見える景色も違ってくる。差の開き方は男性よりも女性のほうが大きいですよね。例えば専業主婦とバリバリ働くキャリア・・・・・・女性二人のそんな関係はよく書かれていますが、今回は三人の物語。三人の女友達が互いに影響を与え合う、十年、二十年、三十年にわたる複雑な関係を書きたいと思いました」

 大阪郊外の団地で育った小学生の友梨は、同じ団地の親友・里子の家庭の異様な事情を知り、衝撃を受ける。そのことで里子と断絶してしまった友梨は、重い無力感を抱えて中学生になったのだったが――ある日、新しい親友の真帆を守ろうとして暴漢をナイフで刺してしまう。翌日、殺人容疑で警察に連れて行かれたのは、何の関わりもないはずの里子だった。

 先の見えないスピーディな展開と独特の緊張感が、息つく暇もなく引っ張ってくれる。舞台となった巨大団地の光景、スクールカーストに支配された教室のひりひりする空気を、懐かしく味わう読者も多いだろう。

「小説の中でこんなに長いスパンを書いたのは実は初めて。今までの書き方では追いつかなくて、あちこちで自分が経験した生の感情を引っ張り出してくる必要がありました。

 友梨たちの中学で知的障害の女の子が同級生にいじめ殺される事件が出てきますが、これは、私が卒業した中学校で実際にあったことなんです。事件を聞いた時に私、ショックだけどびっくりしなかった。いつ起こっても不思議じゃなかったのに、大人はそれを重大視せずに放置していた、なぜもっと早く行動を起こさなかったんだ、と憤りを感じていました」

 不可解な殺人事件の後、連絡を取り合う事もなく別々の場所で大人になってゆく三人。だが心の中では繋がり合っていたことが、のちに友梨が下した決断によってわかるのである。

「友梨は自分のことを孤独だと感じて生きてきたけど、本当にそうでしょうか。繋がりって、幸せで楽しいことだけではない。女同士の絆が強くなるのはむしろ、互いにネガティブな部分まで飲み込んでからだと思います。

 男性がよく『女同士ってドロドロしてるよね』なんて言いますが、『いいえ、あなたたちが想像しているドロドロはまだ全然足りない』と言いたい(笑)。もっとずっと複雑で深いドロドロだし、その中には、ピュアで強い絆もあるんです」

 ついに三人が顔を合わせた場所とは? 心理サスペンスの名手が用意した「驚き」を堪能して欲しい。

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こんどうふみえ/一九六九年大阪生まれ。大阪芸術大学卒。九三年『凍える島』で鮎川哲也賞受賞、デビュー。二〇〇八年『サクリファイス』で大藪春彦賞。名探偵キリコシリーズほか。

こちらのインタビューが掲載されているオール讀物 2月号

2018年2月号 / 1月22日発売 / 定価980円(本体907円)
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インフルエンス近藤史恵

定価:本体1,500円+税発売日:2017年11月27日