ある編集者の方から、「近藤さんの小説は、短い期間の話ばかりですね」と言われたことがある。よく考えれば、本当にそうで、下手をすると数日間、長くても数ヶ月間の話ばかり書いている。だから一度、数十年にわたる時間軸の話を書いてみたかった。

 最初、想定した主人公はふたりだった。ふたりの女の子が手をつないで歩いていた子供時代から、大人になる過程でどんどん関係が変わっていくという話をイメージしたが、どうもそれだけでは、わたしが過去に書いた作品と似ている気がした。

 なにか話を転がすパーツが足りない。悶々としていたとき、ふいに気づいた。

 三人にしてみればどうだろう。三人の女の子たちが、惹かれ合い、反発し合い、時によっては憎み合い、寄り添ったり突き飛ばしたりしながら、それでも深く影響を与えあい、関わり合い続ける。そう考えたとき、ストーリーが一気に動き始めた。

 たぶん、スタート地点から四十年後まで、おつきあいいただけるとうれしく思う。

別冊文藝春秋 電子版6号(通巻322号/2016年3月号)

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発売日:2016年02月19日

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