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【冒頭立ち読み】第159回直木賞受賞『ファーストラヴ』

【冒頭立ち読み】第159回直木賞受賞『ファーストラヴ』

島本理生


ジャンル : #エンタメ・ミステリ

『ファーストラヴ』(島本理生 著)

 正面のカメラを見つめて息を吸い、森屋敷さんに合わせて、にっこり微笑む。

「こんばんは。育児にまつわる視聴者の皆さんの疑問や悩みに、わたし四児の父である森屋敷とお越しいただいたゲストの先生がずばっとお答えする、『子供が寝てから相談室』。本日のゲストはもうおなじみ、臨床心理士の真壁由紀先生です」

 私は軽く会釈して、どうもこんばんは、とあえてフランクな挨拶をした。淡いパステルカラーのセットは保育園のようで、スタジオの眩しすぎる照明の下では今が深夜だということを忘れそうになる。

「真壁先生は日頃からカウンセリングを通して、ひきこもりのお子さんやその親御さんに向き合われているんですよね。真壁先生の目から見て、特になにか感じられることはありますか?」

 私は表情を引き締めて、そうですね、と答えた。

単行本
ファーストラヴ
島本理生

定価:1,760円(税込)発売日:2018年05月31日

プレゼント
  • 『もう明日が待っている』鈴木おさむ・著

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