インタビューほか

山岸凉子特別インタビュー 怜悧なまなざしで作品世界に切り込む! 読むたびに、新しく、胸に突き刺さる傑作集

門田恭子 (ライター)

『天人唐草 自選作品集』(山岸凉子 著)

『天人唐草 自選作品集』(山岸凉子 著)

「羽田で見た彼女は内心恐れてきた将来の自分そのものに思えた。他人事じゃない。いつか自分も精神を病んであんなふうになると、切実な恐怖を感じたのです」

 山岸さんには漫画家という仕事があり、自分の居場所を見つけることができた。響子にも変われるチャンスはあったはずだ。とくに同じ役所に勤める先輩の「君はみえっぱりだ」という指摘は次に踏み出す絶好の機会だったのに、あっさりとスルーしてしまう。そして物語は一気に悲劇の結末へ。普通の少女漫画ならこのへんで理想の男性が現れ、ヒロインを苦境から救い出してくれるのだが、山岸さんはそんなに甘くない。みずから乗り越える努力をしない人は幸せになれないと信じているからだ。

 さて、印象的なタイトルの「天人唐草」について。

「東京に来て初めてあの花を知ったのですが、フグリの意味にギャッとなった(笑)。そうしたらアシスタントさんのひとりが、天人唐草の別名もあるみたいですよと教えてくれて。そっちのほうが素敵だし、ふたつの名前のギャップが面白くて」

 響子はラストで「きっとわかってくれるわ、あの人は」とつぶやく。あの人とは彼女が夢見る理想の男性のことだろうか、それとも父親? どちらにしても痛ましい。



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