いまもっとも注目されている歴史時代小説界の新星、高瀬乃一さんの『貸本屋おせん』(文春文庫)が、啓文堂書店時代小説文庫大賞を受賞。9月16日から11月15日まで、啓文堂書店全店にて「受賞記念フェア」として展開されることが発表されました。
啓文堂書店時代小説文庫大賞は、京王線・井の頭線沿線地域を中心に展開する啓文堂書店が主催する文学賞です。各出版社のおすすめ時代小説文庫から10作品を書店員が投票で選出。その候補作を2025年7月1日から1カ月間、店頭展開し、期間内の販売部数を基に決定されたものです。

この報せを受けた高瀬さんからは、早速「『貸本屋おせん』の主人公おせんは、情にもろく、おせっかい。されど打算的で、図太い女商人でもあります。彼女が抱き続ける読物への想いは、啓文堂書店さんの後押しもあり、大きな賞に繋がることができました。この文庫を通して、未読の読者さんと出会う機会をいただけたと思っています。本当にありがとうございました」と喜びの声が届いています。
受賞作の『貸本屋おせん』は第100回「オール讀物新人賞」を満場一致で受賞した、高瀬乃一さんのデビュー作。板木の盗難や幽霊騒ぎ、幻の書物探しなど、様々な事件に巻き込まれながら、好事家たちに本を届ける貸本屋の女主人・おせんの活躍が共感を呼び、日本歴史作家協会賞新人賞にも輝いた作品です。ぜひ続編の『往来絵巻 貸本屋おせん』も併せて、時代小説界に現れたニューヒロイン・事件を呼ぶ本の虫〈おせん〉の物語をお楽しみください。
■『貸本屋おせん』のあらすじ
舞台は出版文化の華やぐ文化年間の江戸・浅草。天涯孤独のおせんは、女一人で貸本屋を営んでいる。本に魅せられた情熱と責任感を支えに、重い荷を背負って町々を回り、読本を好事家たちに届ける日々。そこで板木泥棒や幻の書物騒ぎ、幽霊騒動など、予想外の事件に次々と巻き込まれ……本をこよなく愛してやまないおせんは、持ち前の聡明さと粘り強さで難題に立ち向かっていく。そのひたむきな姿は時代を超えて共感を呼び、本好き必読の“ビブリオ捕物帖”として話題を集めている。続刊に『往来絵巻 貸本屋おせん』。

■著者プロフィール
高瀬乃一(たかせ・のいち)
1973年愛知県生まれ。名古屋女子大学短期大学部卒業。青森県在住。2020年「をりをり よみ耽(ふけ)り」で第100回オール讀物新人賞を選考委員の満場一致で受賞。2022年、受賞作を収録した初の単行本『貸本屋おせん』を上梓し、第12回日本歴史時代作家協会賞新人賞を受賞。著書に『無間の鐘』『春のとなり』『梅の実るまで―茅野淳之介幕末日乗―』(第38回山本周五郎賞候補作/第31回中山義秀文学賞候補作)『往来絵巻 貸本屋おせん』『天馬の子』などがある。

