史上最年少の19歳でオール讀物新人賞を受賞した大学生作家・米原信さんは、受賞作「盟信が大切」に新たに5編を加えた全6編の連作短編集『かぶきもん』で、今年1月に作家デビューを果たしたばかり。
そんな同書がこのたび、第14回日本歴史時代作家協会賞新人賞を受賞したとの吉報が飛び込んできました!
「日本歴史時代作家協会賞」は、日本歴史時代作家協会が主催する歴史・時代小説の文学賞で、新人作家の育成と歴史・時代小説の振興を目的としています。
『かぶきもん』は、9歳の頃から歌舞伎を愛し、観劇に通うとともに演目図鑑や歌舞伎年表を読みふけってきた米原さんの熱き”歌舞伎愛”が結実した一作です。
リズムを刻みたくなるほどに軽妙で快活な地の文と、目の前で繰り広げられているかのような役者たちの会話の応酬が魅力で、歌舞伎好きも、歌舞伎を観たことがない方も虜になってしまうこと請け合いです。
受賞に際し、米原さんからはフレッシュな喜びの声が届きました。
この度の受賞、まず驚いております。鶴屋南北先生のお導きか、はたまた芝居小屋の神様のお力か——いえ、まずは読者の皆さま、関係各位の皆さまのおかげです。今や歌舞伎を観る時に、自分の書いた役者と重ねてしまうこともしばしば。読者の皆さまには、現実の歌舞伎も拙著『かぶきもん』もご愛顧のほどを、乞い願い上げ奉ります!
新時代の芸事小説を、どうぞお楽しみください。
■『かぶきもん』あらすじ
時は文化文政。江戸の芝居は華盛り。
今をときめく色男・菊五郎に芝居の現人神・團十郎が揃い咲けば、たちまちそこはこの世の極楽。
天才狂言作者・鶴屋南北の筆は次々傑作を生みだすも、金が敵の世の中で、ケチな金主とあの手この手の化かし合い!
すかっと笑える歌舞伎ものがたり、始まり、はじまり~。
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文政2(1819)年。江戸歌舞伎の二大スター三代目尾上菊五郎、七代目市川團十郎はそれぞれの芝居小屋で時期を同じくして「助六」を演じる。江戸芝居イチ「粋な男」という役どころの助六は、成田屋市川團十郎が代々演じてきた演目で、上演すれば必ず大入りになるお家芸。対して、”圧倒的劣勢”と見えた菊五郎の助六に人々はなぜか沸き立ち、團十郎の助六は途中で打ち止めになってしまう――(「牡丹菊喧嘩助六」)。
⇒オール讀物新人賞受賞作「盟信が大切」を一挙公開

■著者プロフィール

米原信(まいばら・しん)
2003年群馬県生まれ。
22年「盟(かみかけて)信(しん)が大切」で第102回オール讀物新人賞を受賞。
19歳という史上最年少での受賞となる。本書がデビュー作。
9歳のとき、からくり人形芝居『忠臣蔵』を観たことで興味を持ち、仮名手本忠臣蔵の絵本から歌舞伎にハマっていく。
観劇に通うとともに、演目図鑑や『歌舞伎年表』を暗記する勢いで読みふける。
現在は東京大学文学部で学び、さらなる歌舞伎道を邁進中。