──五郎は、わけあって妻の真由美に逃げられてしまいますが、一人娘の小百合が、陰に日向に、ピンチに陥った五郎を助けてくれます。小百合役を演じてみて、いかがでしたでしょうか。
「五郎さんは、ある程度の年齢になっているのに聖人君子には程遠くて、飲むこと、食べることが大好きで、体重もどんどん増えて、会った人がちょっと美人だと、すぐ惚れてしまうというキャラクターです。そのために、奥さんの真由美さんとは別れることになってしまったわけですが……。
そういうダメな父親に向き合う娘の小百合の『私がお父さんのことを見捨てておけないのは、私の母性よ』っていうセリフがあるんですが、この言葉を読んだときに、ふっと腑に落ちたんですよ。
私も二人の息子の母となり、子供の成長ともに母性が育っていった感覚がありました。ドラマのなかで、父である五郎の状況が、のっぴきならなくなっていけばいくほど、小百合が母性を発揮して父を助けるんです。「情に厚い」という父のDNAを引き継いでいるんでしょうかね。親子関係としては少し特殊かもしれないですが、ある意味、とっても羨ましい関係だと思いました」
──森繁久彌さんと加藤道子さんによる「日曜名作座」をひきついで十年。西田さんと、たった二人の声だけで「ラジオドラマ」を演じることの難しさは、どう感じておられますか?
「『新日曜名作座』は、声だけで作り上げていく世界ですが、そこに効果さんや音響さん、そして音楽も加わることで世界が豊かになって、リスナーの方に届く段階では、想像力を強烈に刺激して、どっぷり浸かってもらえるようなドラマになっていると思います。
私も本をよく読みますので、活字で小説を読む楽しさも知っていますが、そこをあえて「声」でお届けすることによって、感じてもらえる魅力もあると思っています。
五郎役を演じた西田さんは、『汲めども尽きぬ泉』のような方で、本当に頼れるパートナーです。若いころの『池中玄太』が、もしも転職していたら、五郎にぴったりのイメージだと思いました。西田さんもアドリブを入れながら、楽しく演じておられて、劇中で、『骨まで愛して』を何度も歌うところなんて、まさに『五郎ちゃん、ここにあり!』でした」
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