インタビューほか

<黒川博行インタビュー>30年ぶりに「正統派」警察小説を書いた

「オール讀物」編集部

『桃源』(黒川 博行/集英社)

<黒川博行インタビュー>30年ぶりに「正統派」警察小説を書いた

「本当の警察組織はこうやぞ」

『桃源』(黒川 博行/集英社)

「疫病神」「堀内・伊達」シリーズをはじめ、数々の人気小説を手掛けてきた黒川博行さん。これまで癖の強いキャラクターの出てくる小説が多かった黒川さんだが、新刊『桃源』は、およそ三十年ぶりとなる“正統派”警察小説だ。

「“真面目な刑事が真面目に捜査する”小説はとても久しぶりです。デビュー直後は、ストレートな警察小説を書いていましたが、当時は警察資料も少なく、新聞記者や刑事の知り合いもいなかったので、過去の警察小説を読むくらいしか勉強する方法がありませんでした。ほとんど無知の状態で書いていて、本来の警察組織のルールから外れたこともたくさん書いていましたね。あれから三十年経って『本当の警察組織はこうやぞ』というのを一度きちんと書いておこうと思ったんです」

 捜査に奔走するのは、『落英』(幻冬舎刊)にも登場した大阪府警の上坂勤と沖縄出身の新垣遼太郎。事件は、沖縄の互助組織“模合”での金銭トラブルから始まる。“模合”とは、あるグループで毎月集まって金を出し合い、欲しい人から順に落札していく、本土でいう無尽講のような制度。模合で大金を持ち逃げした男の行方を追っていくうちに、舞台は那覇、宮古島、石垣島、奄美大島へと目まぐるしく展開していく。そして刑事二人が地道に捜査を進めるなかで辿り着いたのは、なんとトレジャーハントへの出資詐欺。沖縄近海に沈む中国船から美術品を引き上げ、一儲けしようという大規模な詐欺事件に巻き込まれていくのだった。

「トレジャーハンティングって、夢のある響きですよね。実際、何年かに一度、十億円単位の沈没船が上がっているといいます。昔の交易の決済はすべて金ですから、交易船には必ず一定の金塊が積まれていました。引き上げれば金目のものがあってもおかしくない」

 模合でのトラブルとトレジャーハンティングに一体どんな関係があるのか、捜査の行方はもちろんだが、大阪府警内部の詳細な描写もこの小説の肝だ。

「大阪府警がどんな組織形態なのか、昇進のルートから上司とのやり取り、捜査費の精算の仕方まで、すべてがリアルです。そして上坂と新垣が“どのように”情報をとっているかにも注目してもらいたい。二人とも現場に行っても空振りに終わっていることが多く、相当苦労しています。実際の捜査現場にかなり近い状況になっていると思います」

 捜査の合間に交わされる、上坂と新垣の肩の力の抜けた会話劇も読みどころだ。上坂が繰り出す膨大な映画知識は、映画好きの黒川さんならでは。様々な面から楽しめる小説となっている。


くろかわひろゆき 一九四九年愛媛県生まれ。八四年『二度のお別れ』でデビュー。九六年「カウント・プラン」で日本推理作家協会賞を受賞。二〇一四年『破門』で直木賞を受賞した。

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