インタビューほか

<貴志祐介インタビュー>パンデミックが起きたとき、人間の本性が明らかになる

「オール讀物」編集部

『罪人の選択』(貴志 祐介)

<貴志祐介インタビュー>パンデミックが起きたとき、人間の本性が明らかになる

究極の状況下で、人間は何を信じるか

『罪人の選択』(貴志 祐介)

『悪の教典』をはじめ、ホラーやミステリ小説で知られる貴志祐介さん。2年半ぶりとなる最新刊『罪人の選択』は、SFから本格ミステリまで多彩な4作品が並ぶ短編集だ。

「夜の記憶」は本格デビュー前に『S–Fマガジン』に掲載された貴重な一編。暗黒の海を漂う水生生物の物語と、太陽系脱出を目指す夫婦の物語が交互に描かれていくのだが、読み進めるうちにふたつの物語は交錯していく。

「今とは文体が全く違う作品ですが、小説を書く上で考えていることは、大きく変わらないものだなと思います。人間が自分ではどうしようもない“非情なメカニズム”に触れたとき、どのような心の動きが起きるのかということに、ずっと興味があるんです」

「呪文」は〈まほろば〉という植民惑星を舞台にしたSF短編。この惑星では原因不明の不吉な出来事が度々起こり、住民たちは食糧難に苦しんでいる。彼らはある方法を使って、これまで危機を乗り越えてきたのだが、ついに万策尽きてしまう。

「人間社会の根底には、常に市場経済があります。“弱い者は強い者に食われる”というメカニズムの残酷さに直面したとき、つまり、貧しさの極限まで追い詰められたとき、人間がどういう行動に出るのかを描きたかった」

「赤い雨」も、“人間の極限”に迫る内容だ。地球上では、謎の赤い生物〈チミドロ〉が増殖、世界各地で赤い雨が降り注ぎ、人々の間では〈RAIN〉という病気が蔓延している。衛生環境の劣悪なスラムでは、日々多くの命が脅かされる一方、選ばれた人間のみが入ることのできる〈ドーム〉では、安全が確保され、異常事態の解明のため研究が急がれている。スラムから這い上がり、ドームの人間となった主人公・橘瑞樹は、〈RAIN〉の治療法を見つけるべく、あることを計画する。

「一回もテンションを落とさずに書ききった」という表題作「罪人の選択」は、手に汗握る本格ミステリだ。〈罪人〉の前に出されたのは焼酎の入った一升と、フグの卵巣の入った缶詰。どちらか一方に猛毒が入っているという。

「この小説のような生きるか死ぬかの究極の状況に置かれたとき、自分が正しい生き方をしてきたと言える人間は、自分の直感を信じることができると思うんです。逆にそうでない人は色々と考えすぎてしまう。自分が清廉潔白であると胸を張って言える人間はほとんどいないと思いますから、この小説でいう〈罪人〉は私たちのことを指しているとも言えるでしょう」

 あなただったら、どちらを選ぶ? ぜひ想像しながら読んでいただきたい。


オール讀物5月号より


きしゆうすけ 一九五九年大阪生まれ。九七年『黒い家』で日本ホラー小説大賞を受賞。二〇〇五年『硝子のハンマー』で日本推理作家協会賞、一〇年『悪の教典』で山田風太郎賞受賞。

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