家族に見守られながらの臨終、そして葬儀。2020年春、そんな「あたりまえ」が揺らぎました。コロナ禍がもたらした、病院のベッドと自宅をつないでのオンライン面会に、葬儀へのリモート参加。大切な人を見送る最期のときがそんな形になってしまうとは、誰に想像できたでしょうか。
京都にある日本最大の禅寺「妙心寺」の塔頭寺院「退蔵院」でも、自粛期間中に檀家さんからの要望で法要をオンライン中継。
躊躇いながらも式を執り行ううちに、僧侶である松山さんの心にも変化があったといいます。
「日本各地で暮らすご親族からたいそう喜ばれ、目が覚めるようでした。罰当たり――そんなことを一瞬でも心配した己を恥じ、自分たちには宗教家としてもっと出来ることがあるのかもしれないと考えるようになりました」
常々、ひとにとって「最期に向かう日々」をもっと豊かなものに出来ないかと考えていた松山さんは、これをきっかけに看取りの新しい形について真剣に考えるようになったと言います。
「寺とは本来、人々に安心を提供する場所です。現代人にとっての最大の不安は死、それから老いでしょう。その不安をやわらげ、見送る人にとっても悔いがないよう、最期に向かうその日々を充実させたい。そのためにまず実践したいのは、お寺が『看取りの家』となることです」
さらに、テクノロジーの恩恵を余すことなく使えばこんなことも考えられる――。
「『リアル走馬灯』とでもいうべき、人生の振り返りや、思い出の共有が実践できたら。布団から見上げる風景にともに生きてきた人々の姿を映し出し、傍らで見送るご家族にもその思い出を受け継いでもらう。それはきっと、見送った側のみなさんのグリーフケアにもつながると思うのです」
こうした現代的アプローチがひとの心に及ぼし得る影響とは、また、ウィズコロナの時代にお寺という場所が出来ることとは一体何なのか。
『ゲームの王国』や『嘘と正典』といった著作で世間を瞠目させた気鋭のSF作家・小川哲さんとともに、大胆に模索していきます。
※本イベントは退蔵院からのライブ配信となります。通常は非公開の場所も含めて、美しい境内の様子もお伝えすべく、日暮れ前の配信となります。
配信詳細は以下の通りです。
文藝春秋の電子文芸誌『別冊文藝春秋』がお送りする生配信企画「別冊文藝春秋ライブトーク(無料配信)」の第2弾として、TwitterライブとZoomウェビナーで無料配信します。
配信概要
別冊文藝春秋ライブトーク(無料配信)vol.2 松山大耕(僧侶)×小川哲(作家)「ウィズコロナの時代に考える新しい看取りとお寺、精神世界の変容」
■配信日時 2020年7月24日(金・祝) 17:00~18:30を予定
■視聴方法
1)Twitterライブ(本の話@文藝春秋BOOKSアカウントhttps://twitter.com/hon_web)による無料配信
2)Zoomウェビナーでの視聴
Peatix https://bunshunevent4.peatix.com
こちらで無料視聴券を取得してください(限定950名)。
ウェビナーでは、事前でもライブ配信中でも、松山さんや小川さんに質問をすることができます。奮ってご参加ください。
PC、タブレット、スマートフォンで視聴できます。配信コンテンツにつき、通信状況によって音声、画像が乱れることがございます。ご了承くださいませ。
松山大耕(まつやま・だいこう)
1978年、京都市生まれ。2003年東京大学大学院農学生命科学研究科修了。07年より退蔵院副住職。各国大使館での講演など、日本文化の発信・交流が評価され、09年より観光庁「VISIT JAPAN大使」、 11年より京都市「京都観光おもてなし大使」。 同年、日本の禅宗を代表し前ローマ教皇に謁見、世界の宗教家などと交流。13年には諸宗教間交流駅伝に参加。 14年度世界経済フォーラム(ダボス会議)に出席するなど、宗教の垣根を越えて活動中。16年には『日経ビジネス』誌の「次代を創る100人」にも選出された。
※「退蔵院」は日本最大(約10万坪)の禅寺「妙心寺」の塔頭寺院で、1404年建立。国宝「瓢鮎図」(模本)や史跡名勝・枯山水庭園「元信の庭」、そして四季折々の景色が美しい池泉回遊式庭園「余香苑」をもつ。かつて宮本武蔵が修行したことでも知られる。
小川哲(おがわ・さとし)
1986年、千葉県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程退学。2015年、『ユートロニカのこちら側』で第3回ハヤカワSFコンテスト〈大賞〉を受賞しデビュー。18年、『ゲームの王国』で第38回日本SF大賞、第31回山本周五郎賞受賞。19年、『嘘と正典』で直木賞候補。
■お問い合わせ event@es.bunshun.co.jp(文藝春秋イベント事業部)