第7回高校生直木賞 参加生徒の声(1)

高校生直木賞

高校生直木賞

第7回高校生直木賞 参加生徒の声(1)

第7回 高校生直木賞全国大会

8月23日にオンラインにて開催された第7回高校生直木賞の本選考会。32校の代表者が全国から集まり、4時間を超える議論の結果、大島真寿美さんの『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』を「今年の1作」に選びました。同世代の友と小説について語り合うことを経験した高校生たち感想文を3回にわけて掲載します。今回は岩手県立盛岡第四高等学校、茨城キリスト教学園中学校高等学校、埼玉県立浦和第一女子高等学校ほか7校をご紹介します。

大宮開成高等学校(埼玉県)山本晃祐「会議の渦に飛び込めた」

 僕は、関西弁をテレビの中の芸人だけが使うものだとどこかで思っていた。しかし、画面のむこうにいる自分と同世代の高校生の口からその方言が発せられていることに気づいた時、地方問わず全国の高校生が同じ本を読み話し合うというこの企画の醍醐味を実感した。

 僕は当初、恋愛小説の中では稀な50代の落ち着いた恋愛を言葉巧みに描いた作品『平場の月』に好感を抱いており、作品への熱意を全国へ発信しようと思っていた。しかし、画面越しに伝わる他の参加者の熱気に怯んでいるうちに、『平場の月』は最終候補から外れてしまい、何も言えなかった自分の情けなさを痛感した。僕が意見を言おうとしても他の人が僕の言いたいことや自分が考えもしなかった意見を言っていて、いかに自分の世界が狭いかを知った。

 このままではいけないと、途中の休憩時間に自分の言いたいことを再考し、次の選考で思う存分自分の意見を言うことができ、爽快感が得られた。自分も白熱した会議の渦にようやく飛び込めた気がして嬉しかった。

 リモートでの開催にもかかわらず、激しく熱い議論をすることができてとても価値のあるものになりました。文藝春秋の皆様や作家の方、ともに話し合った人たちに感謝します。

豊島岡女子学園高等学校(東京都)前山紗希「読書の意義を再確認」

 私は今回高校生直木賞に初めて参加したのですが、これまで読書が好きな人と互いに語り合う機会が無かっただけにとても新鮮な経験になりました。

 今回初のオンライン開催だったこともあり、本番での場の雰囲気がつかめず初めの内はとても緊張しました。しかし、参加者たちと話し合っているうちに皆熱心に自分がおすすめする本について語り合っているのを聞いて、私もそんなに肩肘を張らずに自分の「好き」を 伝えられればいいのだと思えるようになり、後半はリラックスしながら話せたと思います。 

 また、この話し合いの中で「どの本が一番いいか」という話題だけではなく、「そもそも『高校生直木賞』とはどう定義すべきなのか」という話題について話し合えたことで皆が 高校生直木賞にどのように向き合っているのかについて知る事が出来、自分の中でのこの賞と、読書の意義を再確認するいい機会になりました。

東京都立国立高等学校(東京都)石崎りさ子「“読書とはなにか”の真髄」

 高校生直木賞選考における話し合いで、私が1番印象に残ったのは「本を読む視点」だ。

 何十人の人が、同じ本を読んでいる。しかし、読む視点が違うからこそ、違う本にも思えてくるのだ。今回話し合ったのは決まった複数の本に関してだが、それを通して、「その人にとって読書とはなにか」という真髄の一部に触れられたような気がして新鮮だった。

 本ではなくても、テレビ、漫画、動画、と様々な媒体がある昨今。面白かったり感動したりということは他の媒体でもできるしともすれば本より手軽で楽しみやすいかもしれない。しかし、本ほど言葉を楽しめる媒体はない。本を読むこともそうだが、こうして全国の様々な考えを持つ人と言葉を交わして本について討論をする、という、言葉について二度も三度も楽しめるのだ、と思った。

 その人の語彙は人生をかけて構築されていくものだ。いわば語彙はその人の人生を体現しているもの。住んでいるところも遠く、あの日初めて会った全国の高校生たちだが、時に反論し時に共感し、同じ本について語り合ったあの時間で、その人の人生を垣間見ることが出来た、と言っても過言ではないだろう。


■岩手県立盛岡第四高等学校(岩手県)小野田創「いくつもの新鮮な体験」
■茨城キリスト教学園中学校高等学校(茨城県)武石亜実 「読書の新たな喜びを発見」
■埼玉県立浦和第一女子高等学校(埼玉県)島田理穂子「本の魅力を言語化する楽しみ」
■大宮開成高等学校(埼玉県)山本晃祐「会議の渦に飛び込めた」
■豊島岡女子学園高等学校(東京都)前山紗希「読書の意義を再確認」
■東京都立国立高等学校(東京都)石崎りさ子「“読書とはなにか”の真髄」
■国際基督教大学高等学校(東京都)入口侑可「たこ焼きパーティー」
■麻布高等学校(東京都)宇野優歩「高校生直木賞の普遍的な楽しさ」
■田園調布学園高等部(東京都)相川萌心「さまざまな読書のあり方に圧倒された」
■渋谷教育学園渋谷高等学校(東京都)河合暁音「歴史小説が好きになった」

 

大島真寿美

定価:2,035円(税込)発売日:2019年03月11日


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