- 2021.03.23
- インタビュー・対談
「生命体が粒子を発しているのが見えるAIがいたら面白いなと」 池辺葵が『私にできるすべてのこと』で描く近未来と人間の“執着”
池辺葵さんインタビュー#1
ジャンル :
#コミック・コミックエッセイ
近未来にも都市部ではない町に廃棄所が
私が最近よく見ている料理動画は、おばあちゃんが1人でお料理をしているものなんですが、このおばあちゃんがとても魅力的なんです。しわしわでちょっと丸くなった手元しか写っていないので、実際にどんな方なのかはわからないのですが、この手で作ったご飯は絶対おいしいだろうなあと思う手をしているんです。あったかそうな。
一つひとつの動作はゆっくりですが、すごくステキな時間が流れていて。キレイだなと思いました。
料理の動画って早送りにしたり、手早くパパッと作れるのがすごい、みたいなのが多いんですけど、年を取ったらテンポが遅くなるのは当然ですし、私は逆にそれが心地いいなと思って見ています。
──最終話の廃棄所のシーンは、「自分の価値を分かっていない」行為そのものにも思えますが……。
池辺 AIには感情がありませんから、あくまでも自分のすべきことをしているだけなんです。
廃棄所のシーンを思いついたのは、ゴミ山を裸足で歩き回り、換金できるものを拾い集めて生計を立てている子どもたちのニュースを見たことがきっかけです。
その映像が頭の中に残っていて、時屋社長が廃棄所の中でパソコンを使っているシーンも、そこから浮かびました。
──近未来でも、最先端のテクノロジーの恩恵を受けている都市部ではない町に廃棄所があるというのが、やけにリアルでした。
池辺 『私にできるすべてのこと』では、スポットがあたらない「忘れさられた町」の日常も描きたかったんです。
「近未来」というと、きらびやかなイメージを思い浮かべがちですが、現代と同じように、未来にも都市部と地方の「格差」はあるんじゃないかと思います。同じ時代でもそれぞれの場所で時間の進み方は違うし、電子機器をうまく使えない人もいて、格差を抱えながらやっていくんだと思うんです。
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