「作家であると同時に、新型コロナ診療にかかわり、その現場を目の当たりにしてきた医師でもある私がその記録を小説という形」で残さなければならない、という思いから筆をとった知念さん。
この2年半に何が起きていたのか? 小説の感動、コロナウイルスとの戦いへの思い、医療従事者のみなさんへの感謝……書店員のみなさんよりいただいた感想をお届けします。
山本明広さん(アマノ有玉店)
今なお現場に立ち続ける著者が描く、現在進行形の出来事をテーマにした作品だからこそ迫ってくるものがあった。2019年の末から今現在に到るまでを追体験しつつ、我々の知らないところ(病院の現場)ではそのようなことが起こっていたのかと驚かされる。そして、しっかり感染対策している自分も、最前線で戦う医療関係者たちと共に戦っていたんだなとあらためて実感した。
しかし、この物語を全て犠牲にして未知のウイルスと戦う医療従事者たちの感動の物語として消費してしまっていいのか、たとえフィクションとはいえ、それだけはきちんと考えなければいけないと思う。
坂本まさみさん(明文堂書店TSUTAYA戸田店)
まず、この作品を読んでコロナ禍が始まった頃の混乱をあらためて思い出しました。未知のウイルスに世の中全体がおびえ、その苦しみが他者へ、とり分け医療関係の方々への厳しい圧力になっていた事、その中で黙々と治療・防疫にと働かれていた事、切々と響いてきました。
これは作者と医療に関わる方々の強い怒りであり、祈りであると思います。
あれから3年以上経った今、状況は様々に違っていますが、今もなお医療の最前線で日々戦い続けている方々がいて、今の生活があるという事を心に刻みたいと思いました。
河野邦広さん(明林堂書店南宮崎店)
ここ3年弱の苦難の道を3人の医療従事者の視点で描かれているが、著者ならではの医療シーンの緊迫感に加え現実の政策、実名などが織り込まれ、よりリアルさが増し、実際に似たようなことが各現場で発生していたのであろうことは想像に難くない。
そんな中、感情のない機械のはずのウイルスの感情があるかのような狡猾ともいえる変容に翻弄され、悪意ともとれるような無知からの批判・差別に晒されながらも、家族や周囲の人の為という個人の想いと進み選んだ従事者として当然のように思われがちな繋がりによって、一人の少年が救われるのは、最前線筆頭は従事者としても我々市井の者も、それぞれの方法で繋がりを持ち協力することが、この悪魔に対しての最善の対抗策であるということを我々にも突き付けているようにも感じた。
謝意を示さずにはいられない、緊迫のノンフィクションを越えた医療フィクション。
須山知子さん(精文館書店おゆみ野店)
医療に携わっている方々、全ての皆様に改めて感謝の気持ちを伝えたい。目に見えない敵と戦わなくてはならない緊張感、現場の切迫した空気、恐怖心。リアルでした。
「小説」ではありますが「ノンフィクション」として読ませていただきました。なんでも手に入れられるこの現代に起きてしまった感染拡大。今も現場で戦っている医療従事者の方は知念さんを含め、大勢いらっしゃいます。いつ終息するのかわからない中、私達は毎日を過ごしています。
でもこの3年で少しずつ前進してきました。この作品を通して忘れかけていた日々を思い出し、今目の前にある「この時、この瞬間」を大切にしなくてはならない。まさにずっと読み継がれていくべき作品です。
北川恭子さん(旭屋書店アトレヴィ大塚店)
このコロナ禍で医療の現場ではどの様な事が起こり、人々はどう立ち向かってきたのか。
医療に携わる著者だからこそ書くことのできた物語だ。医療従事者たちの苦悩・熱き想いが押し寄せてくる。
齊藤一弥さん(紀伊國屋書店仙台店)
この作品こそが知念実希人だ。未だかつて、これほどまでに著者の魂がこもった作品と出会った事はない。著者の苦悩、葛藤、怒り、願い、全てが詰まっていた。新型コロナを題材とした作品としては後発にあたると思う。「なぜ知念さんは書かないんだ?」とずっと疑問でした。この渾身の一冊の為に溜めに溜め込んでいたわけですね。もう3年なのか、まだ3年なのか。改めて2020年からの社会を振り返ると過酷な期間だったと思います。医師としての矜持を持っているほど、コロナとの戦いに覚悟を決めた医師ほど手も足も出せない現実に無力感を覚え、心を折られた2020年。いや医師に限らず真摯に働いている全ての人がそうだった。今は戦える。戦後を知らない私でも、東日本大震災からの復興は知っている。人間の日本人の底力をこの目で見てきたから断言できる。絶対負けないと。やはり医療小説こそ知念実希人の真骨頂!
山本亮さん(大盛堂書店駅前店)
この未曽有の事態に立ち向かう人間達の苦悩に息が詰まる。知念さんだからこそ描くことができた作品だと強く思った。
加藤京子さん(蔦屋書店熊谷店)
途中、何度も涙しました。私たちの命はこんなにも多くの善意で守られている。使命感や報酬を超え、ひたむきに尽力する美しくて強い想い。全ての医療関係者、そのご家族や友人の方、ありがとうございます。この戦いの日々を物語という形にしてくださり、世に出して頂いたことも、本当に意義のあること、素晴らしいことと存じます。
船津悠子さん(紀伊國屋書店長崎店)
コロナ禍の今の時代、当たり前のようにマスクをつけて、毎日を過ごさなければならない日常になった生活に慣れてしまっている自分がいます。
この物語は3人の人物にスポットが当てられ進んでいくストーリーになっていますが、それぞれ自分達が置かれている立場があり、人間関係も複雑にからみリアルに描かれていて、実際の医療現場を思わせるような展開だった。読み進めていくうちに、3人の苦悩に自分自身も感情移入してしまい、作品にどんどん引き込まれていきました。
コロナと戦い続けている医療現場の状況が見え隠れして、まさに戦場のようだった。私であれば絶対に精神的におかしくなってもいいような状況の中で、3人は乗り越えて成長していく。最後は希望に満ちたラストになっていて、私自身涙が止まらなかったです。
山中津加紗さん(くまざわ書店四条烏丸店)
これはまだ過去ではなく、現在も続いている戦いの物語だと思いました。医療従事者に感謝、なんて口ではいくらでも言えるけど、私は何も分かっていませんでした。
そして、これからも地獄のような現場で働きつづけた方々の苦労や痛みを“分かる”日など絶対来ないでしょう。でもこうして物語として形にし、伝えてくれる人がいるおかげで、想像することは出来ます。知ることも出来ます。この物語を形にしてくださって、ありがとうございます。
こうして感謝を伝えること、デマをデマだと見抜き拡散しないこと、何よりこれからも感染予防に努めること、私にも出来ることをたくさん教えて頂きました。この作品は間違いなく傑作です。もうひとつ私に出来ることがあります。本を売ることです。多くの人にこの作品を手渡していきたいです。
西田有里さん(ジュンク堂名古屋栄店)
新型コロナウイルスの変異、ワクチン接種の進捗、政府の方針によって移り変わる医療現場が時系列で臨場感たっぷりに描かれていて後世に残したい我が国の戦いの記録のような物語だと思いました。看護師、地域最大病院の医師、地域密着個人医院の医師、それぞれの医療従事者の視点で見るコロナの最前線は地獄絵図のように過酷で反ワクチン派や軽率に宴会をする連中には震えるほど怒りがわいてきました。
激務や恐怖で心身をすり減らし、自分や家族を危険に晒してでも地域住民の健康を守るために戦う姿、患者と医師同士と心が通い合う瞬間に感動しました! 多忙な中で続々と報告される新しい論文にも目を通しながら救命のために力を注いでくださる医療従事者の皆様には感謝しかない! 面白かったです!!
岡崎三恵さん(明屋書店ブックスユートピア野間店)
姉が姪の進学先(看護学部)に関して“一生どこでも働けるからすごく良いと思うよ”とプッシュしていて、本人もそのつもりで進学しました。で、このコロナ禍に“親として危ない場面に向かわないといけない職場をすすめて良かったのかなぁ”と言っていた時がありました。私には全くピンと来ず、むしろ人手が必要だし尚更良いのでは? と思ったのですが、この小説を読んでいて、あぁ、こういうことか、と。全く他人事として捉えていたんだと気づいた次第です。
大瀧裕子さん(須原屋コルソ店)
まるで実話を読んでいるようでした。今ではワクチンも皆ほとんど接種済で世の中もゼロコロナからウィズコロナへと変化していくうちに、自分の気持ちもすっかりゆるんでしまっていることに気づかされました。新型コロナが出現し、まだ何もわからない情況で、医療従事者の方々がどれだけの覚悟と誇りを持って立ち向かわれたのか。それは考えていた以上に困難を極め、壮絶であったことか…。
物語ではそれぞれが最終的には良き理解者たちに恵まれ、悲しい結末を迎えずにすんで良かったのですが、きっと現実はもっと厳しい事が多々あったことでしょう。知らないことは罪なのだと思いました。せめて自分や家族などできる範囲で改めて気を引き締め日々を過ごしていかねばと強く思いました。
小椋さつきさん(明屋書店厚狭店)
テレビの報道では伝え聞いていましたが、実際の最前線の緊迫感を追体験できたような気持ちです。医療従事者の方々には本当に感謝の気持ちでいっぱいですし、この作品を通じて、もっとたくさんの方にコロナの危険性と医療の現場のすさまじさを知ってもらいたいと思いました。知念さんのツイートをいつも拝見しています。ワクチンのことを含め、不安なことがあったら知念さんのツイートを参考にさせていただいております。いつもありがとうございます。
大道幹子さん(TSUTAYA太子店)
知念先生だからこそのリアリティ。これは現実に起こったことだと、たんたんと伝わってくる。ニュースとしてしか知らなかった自分を恥ずかしく思うと同時に、医療従事者としての使命を何よりも優先し、闘って下さった方々に感謝します。
薄井みぎわさん(くまざわ書店永山店)
この本は「小説」であり、ノンフィクションやドキュメンタリーではない。それなのに「あの時何が起きていたのか」をこれほどリアルに伝える本はないと思う。ここに書かれていることは私達の住む街のあの病院、あの診療所で実際に起きていた事であり、登場人物の3人の医療従事者達はそこで働く人達の真実の姿だったと思える。
この本を世の中に送り出してくれたことに感謝します。たくさんの人に読んでもらいたいと思います。
加藤克宜さん(宮脇書店越谷店)
プロローグの“それ”へのザワザワ感が、ラストまでずっと止まらなかった。他国の小さなニュース、マスク騒動、危機感への温度差、迷走する政策、理不尽な差別、家族への感染、煽情的なマスメディア……。
この本と出会うまでは逃げない医療従事者が不思議だった。誰もが死を恐れ、家族を思いやるはずの普通の人であるはずなのに。医師としての“義務”“生き甲斐”そして“使命”。重たい言葉である。医師である作家の説得力ある筆力によって、正しい恐れを知ることができた。
知念さんの隙のない緻密さ、読者に脇見をさせない圧倒的なエネルギーは、これまでの作品で十分に感じていたが、あらためて密度の高い時間を過ごさせてもらいました。
新家かほりさん(未来屋書店りんくう泉南店)
現役医師である著者が描く医療物語はやはり重みが違います。凄いの一言に尽きます。リアルな心理描写が刺さり、今年読んだ本の中で最も印象的でした。
約2年半にも及ぶコロナ禍のドキュメンタリーを見ているようで、胸に迫るものがありました。この未曽有のウイルスとの戦いにもいつか終りがくる、それまでなんとか踏んばろうと思える、未来への希望を見出せるラストは秀逸です。
様々な我慢を強いられ、心身共に疲れても必死に患者に向き合う医師たちの壮絶な戦いを私たちは知るべきだと思います。後世に語り継ぎたい1冊です。
政龍信さん(TSUTAYA BOOKSTORE 近鉄草津)
ただ、ひたすらに感謝が溢れた。ミステリ作家として有名な知念さんが放った良い意味での異色作ではないかと感じました。読みやすさはそうですが、“機械仕掛けの太陽”というような言い回しに、何か惹かれるものを感じた。ひたすらに感謝とあるように医療従事者の方へとにかくありがとうという気持ちが読書中~読後まで、ひしひしと涌いてきました。こういった非日常の中で恐らく一番誰よりも戦っているであろう人達にスポットを当てたことに拍手を送ります。非日常の中に垣間見える日常にありがとうを、一人でも多くの方々にこの本を届けたいです。
菅野芳久さん(加賀谷書店茨島店)
恐怖→怒り→感動。現役の医師にしか書けない、小説のジェットコースター。小説の続きを知っている身としては、この後に起こる危機は、もう決して人事ではない。
※本作品の印税の一部は、新型コロナウイルスなどの感染症拡大防止への対応のため、日本赤十字社に寄付されます。
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『赤毛のアン論』松本侑子・著
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