Dさん 「桑田佳祐は楽譜が読めない」という呪文が出てきますが、他のミュージシャンではなく、サザンオールスターズの桑田佳祐さんを選んだのは、何か理由があったんですか。
佐々木 私が大学生のとき、実際に、同じ大学出身の桑田佳祐さんは楽譜が読めないといううわさを聞いて、その時に「桑田佳祐は楽譜が読めない、つまり基礎的な部分で欠けがあるのにあんなスターになっている! ということは、私も社会性がないけど何とかなるかもしれない!!」と、すごく勘違いした希望を持ってしまったんです。でも、社会に出てから、その希望の持ち方は間違っていたと気づいて……。それが元になっています。
この男を懲らしめるにはこれしかない!
Eさん 「ひどい句点」を読んで、たしかに、女の子って、この小玉さんみたいな年上の男性に引っかかっちゃうんだよなぁ、と思いました。でも、最後に、この関係を終わらせなきゃと主人公の章子が一歩踏み出すところが、すごくよかったです。
小玉さんは、自分のしたいように物事を進めて、余裕のある遊び方をしているけれど、それを章子が無理矢理に自分と同じところまで引きおろしたそのパワーに、「思い知らせてやった!」って、すごくスカッとしました(笑)。
Aさん 最後に小玉さんとするシーン、めちゃめちゃエモくって、たしかにこの男を懲らしめるにはこれしかないな、と思いました。激エモです!……って、全然深い感想じゃなくてすみません(笑)。
Eさん 「プルースト効果~」の小川さんも、この小玉さんと同じように自分のナルシシズムの中にいるんですよね。小川さんは、自分が作った恋物語に浸っていて、だから、主人公は、その物語の中にいる間しか、小川さんの恋人でいられなかったんだな、と思いました。
でも小川さんは、大学生になって、年上の彼女ができて、その彼女に振り回されて、初めて他人中心に動くようになった。小川さんがずっと「想像もつかないところで」「想像もできないような」って言っているのは、きっと、自分の世界の中にいるように見えて、実は想像の外に出たかったんだな、と思いました。
Bくん 小川さんだって、本当はこの章子みたいに、振り回されたかったんだよ。
明日は自分のために指輪を買いに行こう、と思った。小指につけるものがいい。これからは小玉さんの名前を呼ぶ代わりに、それを見よう。春になるまでに、運転免許も取ろう。助手席には千佳子を乗せて、裸足で走るのだ。環状線を旋回して、この街で高く飛んでみせる。(「ひどい句点」)
Aさん 章子が小玉さんとの物語に句点を打った後の「明日は自分のために指輪を買いに行こう」と思うこの箇所が、たまらなく好きなんです。都心環状線をぐるぐると何周もドライブするシーンが出てきますが、何かにとらわれて、ぐるぐる同じところを回っているように見えても、少しだけ前に進めている。このラストに辿り着いたとき、目の前がすっと開けて明るくなったような気がしました。
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『赤毛のアン論』松本侑子・著
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