「高校生直木賞」のOB・OGを中心としたメンバーに集まってもらい、佐々木愛さんの『プルースト効果の実験と結果』の読書会を開催。ご本人を交えて、感想を聞かせていただきました。
恥ずかしい過去を思い出す
Cくん 「楽譜が読めない」は、主人公の「わたし」が、同じクラスの男子「くるぱー」に気づいてもらいたい一心で、一生懸命ヘンな行動をとっているところが可笑しくて。くるぱーたちが「インド人の新人の顔が」と言っていたのが聞こえたから、わざと、友だちのすみれと一緒に「インドでの録音が」とか「ガンジス川を表現した曲が」とか廊下で話しているところとか(笑)。それに、主人公とすみれとの間で「宗教」という言葉が二人だけの意味を持っていったり、自分たちのことを「観察者」といったり、くるぱーが教えてくれた呪文だったり、人間関係が深まることで、言葉が自分たちだけの意味を持ってくるところ、自分たちだけで通じ合う言葉が増えてくる感じは、自分の高校時代を思い出しました。
四月は、自分の宗教を選ばなければいけない季節。素早く選ばなければ置いて行かれる。間違ったものを選んでしまうと、疑い深い周囲から巧妙に仕掛けられる踏絵だらけの毎日になる。ふいに焦った気持ちになっているとき、
「わたしは無宗教なの」
その子はひとり言のようにそう言って、軽やかにわたしを追い抜き、離れていった。
(「楽譜が読めない」)
Eさん 皆さんの感想を聞いていると、この二人が独自の世界の中にいて、気になっている男子集団を尾行したりしているのを、わりと微笑ましい視点で読んでいるんだな、と思いました。私は、自分が中学生の時にいかに恥ずかしいことをしでかしたか、思い出してしまって……(笑)。あまりにも自分と近すぎて、ひたすら恥ずかしくて、皆さんみたいに深く読み込めなかったです。でも懐かしかった。
Aさん 自己紹介で、「趣味は人間観察です」って言っちゃうところとか。
Eさん そうなんです、ヤバいですよね。でもわかっちゃう……(笑)。
Aさん 私は中学時代に吹奏楽部で、高校では吹奏楽部には入らず帰宅部だったので、「楽譜が読めない」に出てくるすみれの気持ちがよくわかります。自分も楽器をやっているけど、吹奏楽部のことはどこか冷ややかに見てて、「あれ、宗教みたいだね」と言うところとか。佐々木さんは、吹奏楽部だったんですか。
佐々木 高校生の時に、吹奏楽部でした。全国大会常連の強豪校で、フルートをやっていたんですけど、三年間所属してもあまり馴染めていませんでした。だから、すみれのような、吹奏楽部を外側から見る視点で書きました。
Aさん そうだったんですね。目線が自分に近かったので、シンパシーを感じてしまいました。
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