文藝春秋のWEB漫画サイト・Seasonsの1周年を記念して、お笑い芸人・ロングコートダディのおふたりに漫画やコントについて伺うスペシャルインタビュー。後編では、「コントと漫画の共通点、あるいは違い」を皮切りに、ふたりが惹かれる「イケメン像」や「やり直したい過去」について伺う。

左からロングコートダディの堂前透さん、兎さん
やっぱりコントで大事なのは人間力

――運命ではなく、“作為的に結ばれた(?)”おふたりは、先日キングオブコント2025の決勝に出場され、トップバッターにして見事優勝を果たされました。“特徴的なキャラクターが”、“個性的な設定や舞台で”動く面白さを描く、という点で、漫画づくりとコントづくりとは似てる部分があるのかもと思うのですが、どう思われますか。

堂前:うーん、なんだろう…。僕も昔は漫画をけっこう読んでたので、「漫画みたいなボケ」をしたいなという気持ちもあったかもしれません。でも、やっぱりコントとはちょっと違うかもです。

――というと。

堂前:作っている時に自分の頭の中では漫画のイメージで再現できていたから面白いけど、それは舞台で伝えるにはちょっと違う、難しいかもな、ということはあります。「ああ、これは漫画向きなボケやな」と。そこの違いが、なんか面白いなあとは思ったりしますね。

――絵で伝えるものと、コントとして生身で伝えるものとはやっぱり違うということでしょうか。

堂前:そうですね。僕と同じ漫画を読んできた人には伝わるかもしれないんですけど…。でもやっぱりコントで大事なのは、“人間力”というか。ギャグ漫画とかの面白さとはまた違って、生身の人間をどう感じさせるか、というところが多分一番デカいのかなと思います。

――なるほど。

堂前:…でも、そのコントらしい“人間くささ”という意味での良さを出せている漫画のキャラクターもいて。それが早川さんです。

――(笑)。

:また早川さんの話してる。

――ここまで、お好きだった漫画、少年漫画や少女漫画についてお伺いしてきましたが…「猫漫画」というジャンルも人気です。堂前さんは保護猫さんを家族にされていて、大の猫好きさんかとお見受けしますが、「猫漫画」はお読みになったりしますか?

堂前:『ねこに転生したおじさん』とかはちらっと読みました。かわいい猫を描くのがうまいな~と思って。

――ご自宅の猫さんたちが漫画になるとしたら、どんな世界観がいいでしょう?

堂前:バトル系…じゃないですか?

:いや、誰と?

堂前:うちの猫たちは、けっこうバトルするんでね。『銀牙伝説ウィード』みたいな感じになってもいいかもしれません。

:野犬すぎるやろ。めちゃくちゃ獰猛な犬と犬が山でバトルする漫画ですよ。なつかし!

堂前:うちの猫たちならね、乗り越えられると思ってるんで。新しくきたほう(の猫)がね、ゴツくなってきてるんで。筋肉に溺れたトランクス(『ドラゴンボール』)みたいな闘い方になると思いますけど。

:トランクスって筋肉に溺れた時あったっけ? なんて言ってたその時、筋肉に溺れたトランクスは?

堂前:「筋肉に溺れちまったぜ」。

一同:(笑)

©︎釜谷洋史/文藝春秋

:言ってた? え? そんなシーンあった?

堂前:ベジータから注意されてた。「ハイ、お前それやるんやー」みたいな感じで注意されてた。

:そんなシーンあった? たかつ(堂前家の2匹目の猫)が今そうなっちゃってんの?

堂前:うん…。でかくなってく自分の体に甘んじた闘い方をしてしまっているので、基礎からやっていかないとですね。

:闘わんでええやろ。

完璧じゃないからこそ、イケメンだなと思う

――(笑)。そういえば、トランクスもそうですが、少年漫画にも少女漫画にも「イケメンキャラ」ってよく登場します。おふたりも、男性ながらに「かっこいい」と思ってしまうような、好きな“イケメンキャラ”っていらっしゃいますか?

堂前:そうですね…。(漫画のキャラって)みんなね、やっぱ顔がいいから。でも内面がどれだけイケメンかってところも大事ですよね。そうなると…早川さんけっこうイケメンかもしれないです。

――(笑)。

:早川さんもうええって!

堂前:落ち着いてるし、前に前に行かない感じが逆に。

:早川さんが前に前に行くわけないやん。

堂前:毎話毎話出るわけじゃないですしね。

:毎話出るわけないやろ。毎話毎話出さへんって作者が早川さんを。そんな好きなら下の名前知ってんの?

堂前:ないんじゃないかな?

:もらえてないやん名前! ほな前に前に行くわけないやん。

――兎さんはいかがでしょうか。

:イケメンキャラですよね。それでいうと…『SLAM DUNK』って、花道も流川も、宮城も三井も、かっこいいけど全員完璧人間じゃないって感じしますよね。人間くさいというか、すごいリアルな性格をしてて。完璧じゃないからこそ、むしろめっちゃイケメンやなって思います。

堂前:どこか穴がある、みたいな?

:そうそうそう。

堂前:三井だったら「歯がない」とか?

:いやいやいや、リョータと喧嘩して一時抜けちゃってるだけだから。

――確かに、兎さんがお好きだと仰っていた『のだめカンタービレ』に出てくる千秋先輩も、兎さんのお好きな“どこか完璧じゃないイケメン”かもしれませんね。
    
:そうそう、飛行機乗れなかったりね。

――ということで言うと、こちらの『幸せになりたいマサムネ君』の主人公・マサムネも、彼女に振られそうになって浮気してしまう“完璧じゃないイケメン”です。ちょっとワルいところがあるこういう男子、どう思いますか?

©ヨネマイ/文藝春秋

:え。う~ん、でも「彼女がいるのに遊び相手を作っている人」は…身近にいすぎるんで(笑)。

堂前:芸人にはちょっと多いかもですね。

――「大好きな彼女に振られるかも?」と思ったら、おふたりならどうしますか?

堂前:僕はけっこう無抵抗かもしれないです。

:大好きな彼女なのに?

堂前:仕方ないですから。

:僕は全部すぐ聞きます、基本は。「あれ? なんか冷たくない?」「俺なんかした?」とか聞いちゃうかも。「これ聞いていいのかな?」とか、逆に「いっそ聞いちゃえ!」みたいな葛藤もなく、すぐ聞いちゃいますね。「なんか冷たい」とこっちが思っていても思い過ごしだったりするし、思い過ごしのまま誤解しちゃうのもよくないかな、という考え方です。

エビのほうに行く。人間よりも全然いいかも

――イケメンだ…! ぎくしゃくしてしまった関係、といえば、もう一作ご紹介したいものがあります。Seasonsで先日始まった新連載『夫婦が両思いになる方法』なんですが。こちらは、冷めきってしまっていた夫婦の夫が、ある日ひょんなことから記憶をなくし、一番ラブラブだったプロポーズ前の頃に心が戻ってしまう…というお話でして。

©藤緒あい/文藝春秋

:え、面白そう!

――おふたりは、同じシチュエーションになるならいつに戻りたい…とかありますか。

:え~、どこだろう…。やり直すのも大変だよな…。

堂前:今朝、オムレツを作ったんですけどね。

:うん?

堂前:卵を2個使ってね。あれ、全然3個でよかったな…と思いますね。

――(笑)。

:少なかったってことね? まあオムレツに卵2個は少ないやろうな。

堂前:それですね。

――今朝の自分に戻りたい。(笑)

:まあなあ~。逆に、今の記憶のままでいけるんやったら、小1くらい思いっきり戻るでもありかもな。仮想通貨を早めにやってすごいお金持ちになろうと思います。

――(笑)。

堂前:…か、もう先祖とか飛び越えて、プランクトンとかそういうレベルにまで戻って、エビのほうに行く…っていうのもありですね。

:“エビのほうに行く”って何?

堂前:人間よりも全然いいかもですね。

:エビなんて食べられて終わりやぞ。知ってますか? エビの最初。「ゾエア」っていう微生物で、漂うだけしかできない。それが水底に着底して、やっとエビとなるんですけど、そのゾエアの時点でほぼ死ぬんですよ。

堂前:…っていうのを全部書いてもらっていいですか?

:なんでやねん。書かんでいいです。じゃなくて、なんでエビがいいのかってことを…

――ちょうどお時間が来てしまいました、ありがとうございます。エビについてはしっかり書かせていただきます!

©︎釜谷洋史/文藝春秋

キングオブコント2025の王者コンビであるおふたりながら、漫画や好きなキャラクター像についてあけすけに語り合う様子はただただ仲良しの青年同士のよう。今後もロングコートダディの活躍、そして文藝春秋Seasonsの作品群に刮目いただきたい。


撮影 釜谷洋史/文藝春秋

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