文藝春秋が創設したWEB漫画サイト・Seasonsが今年11/15に1周年を迎える。時近しくして、年に1回のコントのお祭り・キングオブコント2025にトップバッターにして優勝を果たし、時代の寵児となったお笑い芸人・ロングコートダディ。今回はそんなロングコートダディのおふたりをお迎えして、彼らの人生とともにあった「漫画」のこと、心惹かれる「人間像」や「関係性」について、そしてちょっぴり「コント」について伺った。

左からロングコートダディの堂前透さん、兎さん
好きなキャラクターが、気づけば自分の中に入っていた

――おふたりは漫画は読まれるのでしょうか。子どもの頃お好きだった漫画とかありますか?

:読みますよ! けっこう影響を受けてきたと思います。ジャンプだと『HUNTER×HUNTER』とか好きですね。

堂前:僕は『忍ペンまん丸』ですね。ボケが強いのがいいなあって。

――漫画から、おふたりの今のコメディセンスが培われた部分もあるのでしょうか。

堂前:そうですね、培われました。

:そうなん?

堂前:兎も、若手の頃、一時期ずっと『NARUTO-ナルト-』のシカマルの動き方をしてましたね。立ち居振る舞いをかなり参考にしてたと思います。

:いや、そんなことねーわ! …って言えないところがあるな。漫画、ほんとめっちゃ読んできたんで。シカマルしかり、『HUNTER×HUNTER』のキルアしかり、入ってはいるんですよ、自分の中に。ああ、でも一番入ってるのは『ピンポン』のペコですね。

――松本大洋先生の。映画化、アニメ化もしましたね。

:映画も、もう100回くらい観てて。僕ほんまに、ペコの信条というか、生き方が大好きで。それをマネしちゃってるとこがあったかもしんないです。

堂前:確かに。けっこう飛び降りてましたね。

:いやペコすぎんじゃん! ペコ出すぎだって! …でも確かに、けっこう「アイキャンフライ」とか言ってましたね、ちょっとした段差とかを飛び降りる時は。

堂前:段差で言ってた?(笑)

:橋の上からはね、あんま飛び降りることないから。

――堂前さんは影響を受けたキャラクターはいらっしゃいますか?

堂前:天沢聖司ですね。

:『耳をすませば』だ。

――バイオリンやってみたりとか?

堂前:いや、図書(貸出)カードに名前書いたり。

:名前を書くの? 読んだ本に?

堂前:読んでない。読むのめんどくさいから。名前書くだけ。

一同:(笑)

©︎釜谷洋史/文藝春秋

堂前:ひたすら書きました。学生時代はもうそればっかりで。

:いやあれ、「私が借りた本を絶対いつも先に読んでる人がいる」ってとこがよかったんだから、名前だけめっちゃ書いても意味ないで。「この堂前透って人、なんか全部に名前あるんだけど」って引かれるだけで。

――最近は、何か読まれている漫画はありますか?

堂前:最近ですか? 最近は…、さすがに『ONE PIECE』ですね。

:けっこう前からやってるけどね? けっこう前からバズり散らかしてるけどね?

堂前:いやー、あんな伸びるんやね、腕。

:いやだいぶ序盤じゃない? 1巻からけっこう伸びてると思うけど。 

――『ONE PIECE』、面白いですよね。ちなみに、弊社の漫画レーベル・Seasonsの作品に何かご存知のものはあったりしますでしょうか…?

堂前:全部知ってます。

:全部?

堂前:全部読んでます。

僕はもう、○○○○ですね

――ありがとうございます(笑)。弊社のWEB漫画サイト・Seasonsのキャッチコピーは「春夏秋冬、恋をする。」といいまして…男女の恋愛に限らずですが、恋や愛をテーマにした作品が多いです。

 おふたりは恋愛漫画は読んでいらっしゃいましたか? お好きなヒロインがいたら教えてください。…おふたりの世代だと『いちご100%』とかでしょうか。

:『いちご100%』、覚えてます! えー、西野かなあ。東城さんとかね、北大路さんとかね、妹キャラの南戸さんとかいましたね。キャラ名が東西南北なんですよね。

堂前:僕は…早川さんですね。

:誰?

堂前:『サザエさん』の。

:小5やん! いや小6? 知らんけど!

堂前:早川さんはね、花沢さんと、かおりちゃんと仲が良いんです。

――早川さんのどんなところがお好きなんでしょうか。

堂前:落ち着き、ですね。

:いや、そんな目線で見たことないから。

堂前:あと、群を抜いたショートカット。

:ショートカットね! なんか顔思い出してきた。え、短ければ短いほどいいの?

堂前:そんなことない。似合ってたらいいよね。

:まあね。ああ、ショートカットでいうと、ドラマの『梨泰院クラス』のイソもよかったっすね。主人公のパク・セロイは、学生時代からスアって子がずっと好きで。でも、また別のイソって女の子が現れて。イソはセロイにアプローチすんねんけど、まっっったく響かない。でもイソは気持ち届かなくても、セロイの復讐を手伝うって一緒にいてくれんねんな。

堂前:ほお。

:ただね、途中で、この揺らがなかったセロイが…揺らぐんよ。そこのシーンが、もうキュンキュンする。

堂前:「復讐はええかー」ってなるの?

:ほんまにそうやと思う。復讐はもちろんすんねんけど、復讐しかなかったヤツの中に、恋心が芽生える。「いっつも俺の大事な場面でそばにいてくれたのはこの子や」って。悩むけど、自分の心を言葉にするシーンがめっちゃええねんなあ。さらに、このイソって子を好きな仲間もいて…めっちゃアツいんすよ!

――ひたむきな気持ちが通じて、関係性が変わる瞬間に兎さんはグッときた、ということでしょうか。堂前さんは、何か好きな展開や関係性とかってありますか?

堂前:僕はもう「寝取られ」ですね。

:なんの作品のどこのシーンやねん! …おい、インタビュアーさんに「NTR」ってメモされてるぞ。確かにそう表記するけど!

――ど、どんなところがお好きなんでしょうか。

堂前:そうですね。フィクションとしての危うさもある…というか、ファンタジーっぽいけどファンタジーになり得ない…という微妙なラインがいいんじゃないですかね。

:まあね、不倫とかね。

復讐は新たな復讐を呼ぶだけ。それでも許せないのは――

――「不倫もの」や先ほどお話が出た『梨泰院クラス』のように、最近は“復讐”をテーマにした作品も人気です。ちなみに、弊社の『悪役令嬢のお嫁さま』という作品も、自分を辺境に追放した元婚約者の王子と実の妹に復讐を誓うヒロインが主人公なんです。

©かわのあきこ/文藝春秋

:へえー!(コミックスを手に取りながら)「悪役令嬢」ってジャンルが今あるんですね。主人公がヒロインポジションじゃなくて悪役のほうなんすか。気になる!

――おふたりは、最近何か“復讐”しました?

堂前:復讐!?(笑)

:復讐ですか!?(笑)ああ…でもこの間タクシー乗った時なんですけど…。俺、いつも乗ったらすぐシートベルトしてるのに、「シートベルトしてくださーい」って運転手さんにちょっと冷たく言われて。マニュアルとかだろうから全然いいんですけど、「もうしてるから!」とはやっぱりちょっと思うじゃないですか。

堂前:うん。

:だから、もう出発してるのに「あ、じゃあ出発してくださーい」って言っちゃいました。

堂前:最悪な話ですね(笑)。

:言っちゃった後で、「俺、なんて小っちゃい人間なんだ…」と思いました…。

――(笑)ささやかで可愛らしい復讐?ですね。堂前さんは“復讐”は…

堂前:いやっ、復讐はね。新たな復讐を生むだけなんで! 興味はないですね、復讐には!

:俺も興味ないよ!(笑)

堂前:……でも、首領(ドン)・クリークだけは許せないですねっ!
(筆者注※『ONE PIECE』に登場する悪役)

:海上レストランバラティエ編! いやなんで?(笑) あいつそんな腹立つとこあった?

堂前:味方もいるのに毒ガスをまき散らして!

:M・H・5ね?
(筆者注※首領・クリークが撃った猛毒ガス弾の名称)

堂前:危ないですから。

少女漫画にしかない表現がある

――危ないのはよくないですよね。ところでSeasonsは現在、主に女性読者が多いレーベルなのですが、おふたりは少女漫画とかは読まれますか?

©釜谷洋史/文藝春秋

:僕はけっこう読むほうだと思いますよ。若い頃だと『僕等がいた』とか、『NANA』。特に東村アキコ先生のは、『東京タラレバ娘』『海月姫』『かくかくしかじか』とかいろいろ読みました。二ノ宮知子先生の『のだめカンタービレ』とかも好きです。少女漫画って、少女漫画にしかない表現があって面白いですよね。たとえばこういう…(『人魚のあわ恋』の1シーンを開いて見せる)

©顎木あくみ・タムラ圭/文藝春秋

:目のアップと並べて「ドクン…ドクン…」ってなる表現、少女漫画には絶対ありますよね!? これ少年漫画にはないよなあ。

堂前:“少女漫画っぽい”シーンってあるよな。これもな、お弁当の「ポロン」「コロンッ」もな。

:おう? お弁当?

堂前:これ、270度くらいお弁当転がってるんやけど、恐ろしくきれい。

©顎木あくみ・タムラ圭/文藝春秋

:いやめっちゃきれいやん!(笑)

――(笑)。

:確かに270度転がってひとつも寄ってない。梅干しがご飯のど真ん中にある。

堂前:ミッチミチに詰めてる。

――(笑)。こちらは『人魚のあわ恋』という作品なんですが、主役のふたりは先生と生徒という関係性なんです。年の差がある恋愛って、おふたりはどう思いますか?

©顎木あくみ・タムラ圭/文藝春秋

堂前:グッドラブ。…って感じですね。

:何それ?

堂前:いいんじゃないでしょうか?

:まあ歳とかね、関係ないよね。学校の先生はいつも忙しそうだったから、俺はそういう風に見たことはないけど…。

堂前:僕も「キュン」はなかったですね。「ムラムラ」はあったけど。

――(笑)。

:え、ムラムラ?

堂前:学生なんでね、仕方ない。日中は大体ムラムラ。

:日中。学校にいる時ほぼ全部やん。そんなセクシーな先生がいたの?

堂前:ん? いや先生がどうこうとかじゃない、普通に。学生なんでね。

ほぼ全部運命、でも唯一の例外がココ

――(笑)。この作品のふたりはさらに、先生と生徒である以前に、ある“運命”で結ばれていたりするんですが…おふたりは「運命」ってあると思いますか?

堂前:ほぼ全部運命…みたいな気もしますよね。

:まあね、言い出すとね。

堂前:今あなたにインタビューしてもらっているのも運命だと思ってます。…あなたもですよ!(大きな声で急にカメラマンを指さす)

一同:(笑)

堂前:あなたも今マネジメントしてますけど! あなたも運命ですよ!(マネージャーさんに向かって)

一同:(笑)

:まあね、自分たちがね、選びつつ…

堂前:あ、ココだけは運命じゃないかもしれないです。(兎さんと自分を指す)

:なんでェ! ココ1番運命やろ!

堂前:作為的な何かが働いて。

:誰がどう作為したんだよ!

左からロングコートダディの堂前透さん、兎さん

華やかな覇気をまとったおふたりによる、始まりから笑いが絶えないインタビュー。続くインタビュー後編では、「コントと漫画」について、「猫」や「人生をやり直すならどこからか」――など、ロングコートダディの核に迫る。


撮影 釜谷洋史/文藝春秋

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