村山由佳さんの『PRIZE―プライズ―』が雑誌「ダ・ヴィンチ」の「BOOK OF THE YEAR 2025」小説部門第1位に選ばれました!
直木賞該当作なしというニュースもあった今年、「今こそプライズを読んでほしい!」という書店員さんの応援の声を紹介します。(全2回のうちの2回目)
他の何よりも直木賞がほしい!
売れっ子作家の天羽カインが喉から手が出るほど欲した直木賞。作家、編集者、出版社、書店、それぞれの角度から描かれる「なぜ直木賞なのか」「受賞作はどのように選ばれるのか」。書店には面白い本がこんなにも溢れているのに「該当作なし」となった裏側では何が起こっていたのか、その一端を窺い知ることができる。
ここまで踏み込んで書いて大丈夫なのかとハラハラするほどに、読み始めたらきっと天羽カインの熱量と暴走から目が離せなくなる。
くまざわ書店西新井店 塩里依子さん
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最初からただならぬ空気で始まる。ヒリつきの炎は最後まで消えることはない。
そのヒリつくストーリーの中で、悲喜交々、欲が入り乱れる、人間の普段見せない心の奥をこれでもかと書き切っている、村山さんの小説家としてのプライドも受け取れるはずだ。
今後、小説を読む“目”が変わる一冊。
ブックファースト梅田二階店 後藤亜衣理さん
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展開も結末も知っているのに、なぜか読み返さずにはいられない。天羽カインの欲望に、再び飲み込まれていく。 直木賞にこだわる理由は、ただ名誉が欲しいからではない。カインの承認欲求に、読めば読むほど共感と憧れが混ざり合い、心の中でどんどん膨らんでいく。自著が映像化され、本屋大賞にも選ばれているのに、何故ここまで激しく、痛々しく、そして美しくなれるのか。読者はただ共感するだけでは済まされない。 この作品は、文学賞や版元の裏側、作家と編集者の関係など、関係者でなければわからない闇を細かく描いている。だからこそ、カインの欲望がより際立って見える。 千紘の行動には賛否両論あるだろう。だが、カインを一番理解しているという自負があったからこその行動だったのだと思う。賞に魅せられ、最終的に狂ってしまったのは、もしかしたら千紘だったのかもしれない。 読めば読むほど、この物語に引き込まれていく。これは、文学の裏側を描いた作品ではなく、人間の承認欲求の深い水底をのぞき込むような作品だと思う。
有隣堂淵野辺店 大久保あすかさん
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作家にとっての直木賞の意味も編集者との関わりも、所詮私たち読者には見えないもの。だからこそ無責任に覗き見たいと思いませんか? その欲求そっくり叶えられます。
アバンティブックセンター寝屋川店 永嶋裕子さん
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作家という業をひとり背負って荒野に立ち尽くす、作家・天羽カイン。その気高い後ろ姿から目が離せない。
直木賞を獲る、そのことに賭けた執念と努力。
作家という、数多の世界を創り出せる雲の上のような人たち。そんな人たちも人間で、同じように欲もあり、欲するものがあり、もがき苦しんでいる。
作家さんも人間なんだと、当たり前のことに今更ながら気がついた。今回の直木賞芥川賞〈該当者なし〉の事実。獲得することの難しさを改めて考えさせられた。
文真堂書店ビバモール本庄店 山本智子さん
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SNSでこの作品に対する作家さんの共感の声をよく見かけましたが、書店員からも言いたい! 作家や編集者だけじゃなく、この作品は書店員の心の声もぶっちゃけている! つまり本の作成、販売に関わっている人、そういう業界に関心を持つ人、つまり本に興味のある人みんなにぶっ刺さるとんでもない作品です! 欲望ってほんとゾクゾクするほど面白いですね!
喜久屋書店豊岡店 中村美穂さん
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この作品を読んでしまったら、小説を読み方が変わってしまう……! 知りたいような知りたくなったような、でも知らずにはいられない、作家の身の内にのたうつ激情に圧倒されました! 読後も鳥肌が止まらない。奇しくも芥川・直木両賞「該当なし」の今年の結果を殴りつけたような衝撃作!!
紀伊國屋書店 天王寺ミオ店 西澤しおりさん
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その作家の名前は天羽カイン。彼女の望みは唯一つ。直木賞が欲しい。強烈なまでの承認欲求。乾くことのない欲求は作家の業なのか。ただ私たちも同じかもしれないことに気づかされ、自分の腹の中を覗き込まれているようだ。
ふたば書房京都駅八条口店 宮田修さん
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何度読み返しても、毎回心臓がバクバクする。
そんな本は意外と少ないのですが、この『プライズ』は読む度に迫力に圧倒され、ひれ伏したくなります。
「…境遇や年齢が似てさえいれば、誰だって主人公に共感はする。むしろ自分とはまったくかけ離れた人物の、すぐには理解できないような人生に激しく心揺さぶられる経験をもたらす小説こそ、真に普遍性を持つと言えるのではないか」
本文中のこの言葉がまさに『プライズ』を言い表しているのだと感じました。
主人公、「天羽カイン」の気性の激しさ、運転手サカキへの愛情、編集者への態度。
(文字通り手足になれとはなんと激しい……そしてご自身の足だって踏み外すのですから……)
すべて簡単には受け入れられないけれど、どこかで自分の中にもある激しい気持ちに呼応して少しわかる気がしてきます。
こんな激しい主人公をあんなに優しそうな村山由佳さんが描く。作家が作家を書く。重ねられて読まれる事もご承知であろうと思います。
そこにも震える程の感動があります。
小説に、作家に、編集者に、出版業界に、直木賞に関心のある方必読の書です!
リブロ福生店 海老原眞紀さん







